かつてLeanpubで販売していた電子本、「放り出せば楽になる」の中盤部分です。
リリースの行い方
何を解放するのか
リリースに対する大きな誤解は、リリースが進めば感情を全 く感じなくなるというものです。辛い感情を経験されている方 は、特にそう思われるようです。
残念ながら、リリースが進んでも感情は感じなくなることは ありません。逆に抑圧する習慣が少なくなり、明確に感じるよ うになります。
ですが、これは不幸なことではありません。なぜなら、感 情をストレートに感じるようになる一方でリリースが進むと、 段々と気分が向上し、感情のレベルも良い方へ上昇するからで す。これが重要なのです。例えば、今あなたがやる気に満ち溢 れている状態になっていれば、怒り、悲しみ、恐れに捕らわれ 続けることはありません。自動的に手放せるのです。ですか ら、気分よく過ごすことは重要なのです。
たとえ怒り、悲しみ、恐れにとらわれているとしても、最低 の状態であるアパシー・無気力の状態よりはましです。あなた が本当のアパシーで何事にも反応しない無感覚の状態でした ら、あなたはこの本を精神病院の病室か、収容施設などで呼ん でいる可能性がありますね。しかし、もし「恐れ」でも抱いて いるのであれば、アパシーでいることはできません。既に物事 に心を動かされているからです。
より低い感情を手放し、より高い感情でい続けることができ るようになります。
では感情とは何でしょうか。辞書的には心の動きですが…。
実際、あなたは心の動きを感じているのでしょうか?それと も、物理的な身体の感覚を感じているのでしょうか?
あなたが特別な超能力者でない限り、心の動きを直接みるこ とも、感じることも出来ません。例え、自分の感情であっても です。私達は、感情を体の感覚として認識しています。
だいぶ前からNLPと呼ばれる領域が、能力開発やビジネス 分野で人気を得ています。ざっと説明すれば、脳を上手く使用 する方法です。最近、日本でもテレビで扱われ、多分来年、2 013年から2015年くらいでブームになるのではと予想し ています。しかし、10年以上の前の能力を上げるセミナー的 な日本の番組でも、それとなく技術が紹介されていましたし、 実際アメリカで生まれたのはだいぶ昔です。扱う分野も広く、 包括的にNLPという名前が利用されますが、開発者により全 く別の技術を指すこともあります。あまりに広いので、この書 籍の内容をNLPの一つだと言ってしまえば、それで通ってし まうかもしれません。(笑い話ですよ。この本はNLPではあ りません。)
そのNLPでも、古典的とされている情報に人間の感覚と感 情が結びついているというものがあります。これは人により異 なりますが、例えば悲しい出来事を思い出すと、ある人は右上 で白黒で見え、だいたい2メートルくらい先のスクリーン上に その出来事を感じると言うものです。もちろん、この特性は人 それぞれ違います。
逆に、楽しいことはカラーで、自分がその物語を体験してい るように思い出すというのであれば、その悲しい出来事をカ ラーで、自分が今体験しているように思い出すと、楽しい出来 事のように感じてくる、もしくは悲しみが少なくなるのです。 これが示しているのは、私達は過去を変えることはできませ んが、「感じ方」を変えることができるということです。
感情を直接的に感じていませんが、私達は特定の感情に結び ついた体感覚を感じているのです。悲しいなら、胸がぎゅっと 締まり、目頭が熱くなり、涙がこぼれそうになり、息を詰め、 顎を引き、下半身の力が抜けます。これも個人差はあるでしょ うが、こうした体の動きや反応を私達は感情と感じています。 「気分が悪い」とよく私達は言いますが、これは怒りです。今 度、気分が悪い時、何を感じているのかよく観察してくださ い。呼吸は浅めになり、肩のあたりに力が入り、胸に圧迫感を 感じます。気持ちを感じているのではなく、体の感覚を感じて いるのです。反応を感じているのです。
リリースで解放するものは、こうした感覚です。こうした感 覚が感情を生み出しているとも言えます。あなたの気分を押し 下げる感覚を段々と少なくすることで、もともと持っている良 い気分を多く感じるようにさせてくれるのがリリースです。
ですから、リリースが進んでも感情が無くなることはありま せん。しかし、良い気分で過ごせる時間は長くなります。そし て同じような出来事が起きても、心を乱されることが少なく なり、感情もより良いレベルで対応できるようになります。ま た、抱いてしまった悪い感情から、素早く回復できるようにな るのはもちろんです。
リリースしても出来事を忘れることはありません。しかし、 出来事から影響を受ける感覚を消し去ることはできます。その 結果、思い出しても悪い感情を感じることは無くなるのです。
経験こそ最良の教師
リリースのように、感覚や気持ちを手放す手法を習得するの が初めての方は、自分の感情にじっくりと触れるのも初めてで しょう。正直、どう行うのかわからないかもしれません。
それでも、実際にチャンレンジしてください。ただ読むだけ では何も変わりません。
私自身、リリースを理解するのには苦労しました。それは、 まず頭で理解しようと思ったためです。ただ実践するよりも、 調べ、理解するために時間を費やしたため、時間がかかりまし た。
実践すれば、自然と理解できる部分が多いのです。経験によ り学べることが多いのです。それは情報を探るよりも、はるか に早いのです。リリースに関しては、まさに経験こそ最良の教 師なのです。
また、私とあなたでは、当然ながら異なっている部分が多い のです。生きてきた人生も違います。感覚の感じ方、どこで感 じるか、どう感じるかも異なるでしょう。ですから、私が紹介 する方法にアレンジを付け加え、変更しても構いません。初め から全てが自分にピッタリと来る手法はありません。自分のた め、自分に適した、自分の道は、自分で探しだしてください。 経験と直観を利用してください。
ただし、手順が複雑になってきたのであれば、それは頭のみ で考えた方法です。ネット上や書籍で複雑な手順を紹介してい る人達もいますが、多分間違いなく実践者ではありません。実 践していけば、経験により磨かれ、余計なステップは省かれ、 段々と単純になっていくものです。
リリースは本来、とても単純なものです。
大切なのは決意
最終的に、いくら自分にぴったりな方法を作り出す必要があ るとはいえ、肝心なポイントを省いてしまったのでは、効果が 出せません。
一番大切なのは、リリースする決意です。これを理解してい ないと、開放できません。
クリーニングとか、リリース、クレンジング、クリアリング などと呼ばれる別のテクニックも既にたくさん存在していま す。そうした手順を試してみた方もおられるでしょう。もし、 それらの手順を試し、効果を十分に感じていなかったとした ら、その理由は手放す決意がされていなかっただけです。
逆に、解放する決意をしたのであれば、今まで効果を出せな かった方法を使用しても、今度は十分に効果が出せます。
最終的に目指すレベルは、リリースするという決意のみで、 手放せるようになることです。あくまでも、様々な手順は、リ リースの決意を強くし、自分を納得させるための補助に過ぎま せん。初めはこうした手順を、解放の補助として使用してくだ さい。自転車に乗れるようになるために、最初に補助輪を使用 するのは良い考えです。または、大人が転ばないようにサポー トしてあげるのも、良い方法です。いきなり「さあ、乗れ」で は難かしすぎ、たとえ子供に乗れる能力があっても、乗りこな せなくて苦労することになるでしょう。コツをつかむまでは、 適切な補助が必要です。
リリースの経験を積んでください。その経験により、段々と 単純な方法で手放せるようになり、最後には大抵のことを決断 だけで解放できるようになります。「ああ、ここにこんな制限 があるな」、「手放そう!」これでおしまいです。
意識する決意、無意識の決意
決意には明確な意識と自覚を持って行う意識的なものと、心 の奥底で決める無意識のものがあります。そのどちらでも、順 分に強く決断できれば、リリースは起きます。
ある出来事が起きたとします。それはあなたにとって小さな こと、わずかな感情の乱れだけを起こしました。あなたは特に 気にするほどのことではないと感じます。似たようなことは、 一日に何十回か起きるでしょう。
でも、あなたは覚えていません。握りしめて取っておこうと いう決断をしなかったため、自然と解放されたのです。
さて、今度も小さな事ですが、あなたにとって気になること が起きました。髪の毛がうまくまとまらない。通りすがりの人 がチラッと見て、クスッと笑った。思いもかけないタイミング で後ろの車からクラクションを鳴らされた。会話中で相手の人 が、変なところを強調して話した。などなど。
本当に小さな事ですが、人により気にする点は異なっていま す。自分でも小さなことで、重要でないと理解しているので す。でも、心が乱れたことを自覚しており、そんな小さな事に イライラする自分自身に対して立腹し始めます。そして、その 悪い気分のまま、数分、時には数時間、過ごすのです。
何が起きたのでしょう。意識はしていませんが、無意識に握 りしめたのです。それを持続させようと決めたのです。
今度は、意識的な決意について考えてみましょう。通常、意 識的な決意を私達は頭の中の言葉として認識しています。しか し、決意は言葉ではありません。
「右手を上げる」と言葉にしながら、左手を挙げてみてく ださい。できますよね。左手が上がりました。「右手を上げる」 は言葉ですが、左手を上げたのは「意志」です。そう決断した のです。
私も、多分あなたも経験している馴染み深い例もありま す。「さあ、今日はこれをやるぞ。」でも、やらないのです。え え、お馴染みですよね。
頭の中の決意、「今日はこれをやる。」は言葉です。ここから しばらく、ちょっと表現を工夫したいと思います。「今日はこ れをやる!」
ビックリマークがあなたの決意の部分です。つまりこの場 合、頭の中の言葉と、言葉通りの決意が行われました。
その決断をした瞬間、たぶん実際は言葉を思い浮かべている 最中から、「!!!!!!」が発生します。この連続ビックリマー クは、あなたの逆の決意です。
「できないよ」、「明日でいいんでないの」、「かったるな」、「面 倒だ」等などです。ですが、言葉は使っていないのです。ビッ クリマークの連続はそれを表しています。言葉は発生していま せんが、確かに行うことに対して反対する決意を無意識に行 なっています。その中のいくつかには、うっすら気づいている かもしれません。
行おうとする決意に対し、その逆の決意が多く、大きいので す。ですからできません。とても、シンプルですね。
右から来た自動車と、左から来た自動車、正面からぶつかっ たらどうなるでしょう。車は大破し、衝撃が起きます。ドー ン。ガチャーン。
決意も同様です。あなたが決意した「行う」に対して、同時 に起きる「行わない」という決断はぶつかり、衝撃が起きま す。あなたはそれを抵抗感として感じるのです。胸の中にもや もやが起きます。嫌な気分になります。ため息が漏れます。顔 の筋肉がつっぱります。他の感覚かもしれません。いずれにせ よ、よくご存知でしょう。今まで数多く経験されていらっしゃ るでしょう。思い出してください。
これは使用価値のあるデーターです。あなたが抵抗感を感 じているのであれば、逆の決意があることを示します。な らば、その抵抗感をリリースしましょう。それから、もう一 度決意し直してください。「ようし、やるぞ!」それに対し 「!!!!」(数が減りました。)
まだ抵抗感を感じるようです。では再度抵抗感を開放しま す。そして、決意しなおしましょう。抵抗感が無くなるまで繰 り返すのです。
すると最後には「やる!」、「できる!」という言葉と決意だ けになり、抵抗感は消えます。言葉と決意は一致します。この 時、気分は良く、自分で本当に決めたことが分かっているので す。
場合によっては、「やる!」、「できる!」のビックリマークが とても大きく、逆の勢力を吹き飛ばしてしまうかもしれませ ん。世の中で、大きなことを成し遂げた偉人たちが持っていた 資質です。強い決意ができ、そのため、抵抗感を吹き飛ばし、 物事を行動でやり遂げます。
日常生活で、言葉を使わずちょっとした決意をすることは、 我々のような偉人でない普通の人間でも、実は常に行なって います。例えば、道を歩いているとしましょう。!(右へター ン)。!(左へ曲がる)。!(階段を上がる)。!(立ち止まる)。
決意していない?もしそうであれば、あなたは夢遊病者で すね。言葉を使わず決断しているだけで、はっきりと決めてい ます。もちろん、習慣になっている大抵のことは、意識してい ません。意識をしていませんが、決断はしっかり行なっていま す。では、完全に無意識でしょうか?
今度、今まで歩いたことのない場所を歩く時に、少し自分の 決断に注意を払ってみましょう。右足を出し、次に左足を出す というのは無意識のレベルで行なっていますが、右に曲がる、 左に曲がる、立ち止まる、歩き始めるなどは、意外なことに意 識して決断しているのに気がつくでしょう。決断に慣れすぎて いて、意識していないと思っているだけです。
ですから、言葉を用いず、意識的に決断することは可能で す。そして普段、私達が行なっていることです。改めて行おう とすると難しく感じますが、誰でも行なっていることです。
さて、「もうちょっと読み進めますか?それとも、今日はこ こまででやめておきますか?」どちらでしょう?????
この質問に対して、あなたの「!」は何だったでしょうか? どちらを選んだにせよ、言葉を使おうが、使わまいが、決意し たことに気が付きましたか?
決意を感じる選択法
事を成し遂げた偉人たちの資質を思い出してください。考え たことをそのまま強い意志としてストレートに持ち続けられる 能力です。
私達は残念ながら、こうした能力を持っていることが少ない ため、決めたことを貫徹できず、ふにゃふにゃに曲がりくねっ た人生を歩みます。あっちへ行ったり、こっちへ行ったりし て、ゴールへ辿りつけないのです。
言葉として考えたことをそのまま決意として持ちたいですよ ね。
これまでの人生で、この能力を身につけることが出来なかっ たとしても、こうした能力を上げることはできます。今は「や ろう!」と心の中で呟いても、スカスカな感じしかしません。 自分がそう決めたという実感が持てないのです。
この本の中で、「持ち続けるか、それとも、解放するか」と いう質問を多用していることに気が付かれていると思います。 ズバリこれがコツです。リリースするためには、決断が重要で あると気付いた頃、「ではどうやって決断すればよいか」がつ かめませんでした。決断しても、決めたという実感がなかった のです。
約10年位前だと思います。非常にイライラし、怒りっぽく なっていた頃がありました。その時に作り出したテクニックが あります。自分の将来を二本の線でイメージし、片方の線上に は、怒った顔のマークをスタンプのように押していき、もう一 本は途中から笑顔をスタンプします。それを両方眺め、「一刻 でも早く怒るのをやめて、楽しくいたほうが、人生全体で考え たら得ではないかな」と自問しました。すると、怒りが収まり ました。
これを思い出し、応用したのです。2つの選択肢を思い浮か べます。真面目に考え、どちらかを選択しました。すると、こ の選択により「決断」した感覚をつかめたのです。
あなたの決意を2つの選択肢として表現してください。そし て、真剣に考えてどちらか一方を選ぶのです。
シンプルです。ですが、ここまで読む間、実際に質問を読 み、真剣に考え、選択してこられた方であれば、納得していた だけるでしょう。決断を行なっている実感がわきます。
もちろん、この方法は様々な場面で利用できます。2つの質 問は自分にとってリアリティーがあり、真逆のシチュエーショ ンを表したほうが、よりダイナミックで、選択した時に決断し た実感を得られます。
2つの選択肢を思い浮かべたら、その二つを真剣に思い浮か べ、真面目に片方を選びます。
実例で考えましょう。苦手な人は本当にできない、部屋の掃 除を思い浮かべましょう。できる方は、「ようし、掃除しよ!」 で、すっと体が動き、簡単に片付けてしまえます。逆に掃除が 苦手な方は、心の中に真逆の意図が湧き出て、抵抗を感じま す。心が重くなり、今度はやめる理由を言葉で考えだし、「ま あ、後でいいや」と引き伸ばします。あなたが掃除が得意だと しても、今回は苦手な立場の人の考えを頭の中でシミュレート してください。
いつもの通り、引き伸ばしの癖が出ました。でも、今日は ちょっと違うのです。部屋はもうごちゃごちゃで、それに対す る抵抗も大きく、心の中でやる・やらないのせめぎ合いが大き いため、いつもの通り引き伸ばしの決意もできないのです。
さて、こうした拮抗状態が一番苦しいのです。もし、やる と決断して行えば、苦しくありません。やらないと決断して、 きっぱりやめるのであっても苦しくありません。両方の気持ち を抱き続けるのが苦しいのです。さあ、決断しましょう。
まず、やらない時の状況を考えてみましょう。あなたの部屋 を訪れる恋人、親、同僚、クラスメートがあなたの部屋の状況 を見て、唖然とします。部屋の中にはゴキブリやら、ネズミや らが姿を見せ始めています。食品はカビて、臭気をはなってい ます。洗っていない洗濯物も乱雑においてあります。汚れた下 着も丸見えです。訪問者は露骨に嫌な顔をします。たぶん、こ の状況を面白おかしく誰かに話すでしょう。あなたの評判は下 落するでしょう。こうした「やらない場合」の状況をリアルに 考えてみましょう。もちろん、あなたにとってリアルであるよ うに考えましょう。
逆に、掃除した時の状況もリアルに考えます。広々とした空 間、澄んだ空気、誰が訪ねてきても、リラックスでき、一緒に 楽しく過ごせる部屋をイメージしましょう。「やった場合」の 状況をリアルに考えます。あなたにとってリアルに思えるよう にイメージします。
では、両方の場面を的確に思い浮かべられる選択肢を考えて ください。
「部屋を散らかしたまま、汚しておいて、評判も気分もやる気 も落としたまま、あと数年過ごす?それとも、一時間みっちり と片づけ、掃除して、ピカピカの部屋で、気分良く過ごす?」 表現は自分にとってリアルにしましょう。この例では、時間の 表現も付け加え、よりリアルに感じられるようにしました。
選択肢を作成し、その質問を読んだら、再度両方の状態をイ メージしましょう。浮かび上がってくる気分を感じます。そし て真剣にどちらにするのか考えましょう。
どちらを選んでも良いのです。あなたには選択の自由があり ます。どちらを選んでも一度決めたなら、反対側の抵抗は解き 放ち、楽に過ごしましょう。悪い感情を解放するときとは異な り、どちらを選んでも、気分は回復できます。感情の処理の場 合は、持ち続ける決意を行えば、気分は回復できませんが、掃 除であれば、「行わない」と決定し、「したい」思いを開放して しまえば、それでも良いのです。自分の選択にしっかりとリア リティーを持ち、それを実感できます。
もちろん、掃除をする方に決意するほうが、通常より好まし い結果になることでしょう。その場合、「したくない」という 思いの抵抗をリリースしましょう。
要するに、どちらか一方に決めずに、グズグズやっている状 態では、反対の意志がぶつかりあり、動けない状態にはまりこ み、精神的なエネルギーばかりを消費し、段々気力が削がれて いくことになります。イライラは逆に大きくなります。
一般的な常識で、掃除することは良いこと、汚い部屋は悪い ことという思い込みがあるために、掃除するという選択を自分 に強制しがちですが、両方のメリット、デメリットを比べるな ど、真剣に考え、その時点でどちらかをスパっと決めることが 大切です。
しかし、決断を求められる状況は、メリット、デメリット、 正しい、間違っているの尺度で、いつも決定できる場合だけで はありません。例えそうであっても、どちらかに決め、反対側 の思いを消してしまうことは大切です。 あなたは、今日中に交通費を精算しなくてはなりません。と ころが、今月分の一箇所だけメモし忘れています。担当の人の 目の前に立っているので、今すぐ精算してしまいたいのです が、お客さんからの呼び出しがあり、すぐに行かなくてはなり ません。クレームです。近所ですから、すぐに行かないと大目 玉で、一度怒らさせるとすぐに契約を解除するワンマン社長が 相手です。もし、すぐにクレーム対処に行くとなると、この社 長はしつこい性格のため、夜中まで処理がかかることが予測さ れています。今日中に精算できなければ、来月に回さなければ なりません。今月は交通費がたくさんかかっているため、精算 しないと来月末に家庭の財政が大変苦しくなるのが分かってい ます。
さて、このワンマン社長を怒らせ、契約を打ち切られる可能 性があるのを知りながら、時間を取り不明な交通費をしっかり と調べ、精算書を書き、精算をすませますか?それとも、来月 の生活が苦しくなるのを知っていながら、それでも会社のた め、一刻も早くクレーム処理に出かけますか。
まるで究極の質問のような意地悪な状況ですが、私達が実際 に行う決断は、このように正悪や効率、メリットにより、どう するべきかはっきり自分でもわからないことが結構ありますよ ね。たとえそうであろうとも、二つの選択肢を素早く考え、真 剣に考え、どちらかを選んだら、スパっと残りの選択肢を諦め ましょう。グズグズしてはいけません。
もし、今日中に精算するすると決めたなら、できるだけ早 く運賃を調べ、金額を間違わないことに集中しましょう。そし て、直接コントロールできない社長に関しては、成り行きに任 せ、煩悶しないことです。社長から怒られることはもちろん、 契約を打ち切られること、そのことで上司より叱責を受けるこ ともある可能性をそのまま受け入れましょう。もし、浮ついた ままやっていては、あわてて10分以上かかる精算処理が、心 を決めることで5分で済むかもしれません。
逆に、クレーム処理を優先させるのであれば、来月は苦しく なる可能性を受け入れ、取引先社長とのコミュニケーションに 集中しましょう。あなたが集中してクレームを処理したおかげ で、いつもは許してもらうまで、夜中までかかるのが、帰社し て、精算を出来るだけの余裕が十分ある時間で、許してもらえ るかもしれません。
どちらもそれ相応のリスクがあります。メリットもありま す。どちらを選んでも良いのです。決断をしたら迷いは消し てしまいましょう。もし、迷いや抵抗を感じるのであれば、リ リースしましょう。
この決断を選択で表すテクニックを使用してみてください。 少し練習すれば、意識して、実感を持った決断ができるように なれます。
リリースの手順
さて、いよいよリリースの手順を学びましょう。4つのス テップに分かれています。
紹介する手法はLLリリースとして公開している内容を、メ ンタルトレーニングや心の制限の解放というテーマに取り組ん だことがない方々向けに、説明するものです。
以降の手順の中で一番大切なのは、決断のステップです。リ リースすることを決意します。最終的には、決意だけで手放せ るようになりましょう。しかし、これは最終目的レベルです。 私もリリース能力はだいぶ上がりましたが、決断だけではうま く行かず、全部の段階を行い直すこともあります。
例えばつい先日、近所のゴミ問題で怒りを爆発させました。 いつもなら、リリースすれば感覚は離れていくのに、胸のとこ ろに圧迫感が残りました。自分で何をこだわっているのか調 べ、過去にも戻りながら探り、何かを見つけては解放しまし た。その時は良いのですが、すぐに圧迫感だけが戻ってきてし まいました。
こんな状況を数日繰り返したあと、基本に戻りました。あと で説明する方法ですが、リズムを保ち机をこんこん叩き、その 音を聞きながら、圧迫感を感じていくうちに、消えてなくなり ました。ほんの5分間もかかりませんでした。補助をうまく使 用すれば数分で解決できた感覚に、決意だけで消そうとして数 日間付き合ったわけです。
なぜ手放せなかったのでしょうか。どうにかこうにかリリー スしようと奮闘していたためです。コントロールしようとし ていて、泥沼にはまったのです。消そうとする努力や無理にコ ントロールしようとすることは、リリースではありません。単 純な手法を補助に使ったことで、意図的な努力やコントロール を忘れ、ただ認め、感覚を感じていたので、開放できたのでし た。罠にはまっている間は、どんな罠なのか自分では気づかな いものです。
皆さんも、段々とうまく手放せるようになり、ほとんどのこ とは決意だけで開放できるようになるでしょう。上達したのに も関わらず、うまく行かないことがあったなら、手順を見なお してみてください。手順にはリリースをうまく行うためのヒン トを詰め込んであります。
1.準備ステップ
まずは準備しましょう。運動の前に準備体操が必要なよう に、リリースにとりかかる前に、いくらか簡単な準備を行いま す。
- リラックスしましょう。できるだけでかまいません。
- リリースできる可能性を認めてください。
この本では感情の手放しを主に扱います。何をリリースする のか、よく分かっているでしょうから、この2つだけ行なって ください。本来はもう少しだけ長い手順ですが、現在感じてい る感情を取り扱うには、この2つだけで十分です。
まず、できるだけリラックスしてください。感じている感情 がどんなに苦しい、大きなもの、強いものであっても、体と心 をできるだけリラックスしましょう。肩や首を軽く回したり、 背伸びをしてください。軽く体を揺すって、力を抜いてくださ い。
軽くリラックスしたら、自分がリリースできる可能性を認め ます。これから紹介する方法で、一回リリースできたなら、可 能性を認めるのは簡単でしょう。全く初めてで合っても、嫌な ことを経験したが、今ではなんとも思っていない出来事を考え てください。時間はかかっているでしょうが、リリースした経 験はあるはずです。そうした出来事を思い浮かべてもらえれ ば、可能性を少しでも認められるはずです。そう、これもほん の少しでかまいません。
たとえ少しだけでも認めることができたら、次に進みます。
2.決断ステップ
あなたが「今」、感じている感情をリリースすることを決断 します。
「リリースして嫌な気分を感じ続けるのか、それとも投げ捨て て、気分良く幸せにすごすか」
2つの選択肢のうちどちらを選ぶのか、真剣に考え、決断し てください。毎回、新鮮な気持ちで、真面目に考え、決めてく ださい。機械的に決めてはいけません。
既に話したとおり、自分にとって実感が浮かぶような表現に 変更することをおすすめします。質問がリアルであればあるほ ど、決断を下した実感を得ることができます。
決断することに慣れてきたら2つの選択肢法を使用しなくて も、「よし、開放しよう!」、「リリースするぞ!」、「もうこだわ らない!」とストレートに決断できるようになれます。
もっと解放に慣れてきたら、「!」だけです。覚えています か。以前の章でビックリマークを用い、言葉ではない意志を表 現しました。言葉を使用しない決断、リリースするぞという純 粋な意志のみで、手放せるようになります。「ここに嫌なもの がある」と認識したら「!(リリースの決意)」でおさらばでき ます。
3.確認ステップ
決断と、この後に続いて説明する強化のステップを行った ら、続いてチェックのステップを行います。解放できている か、自分で確認します。
ここでのポイントは、残っている感情と感覚ではなく、解放 し軽くなった部分に注意を向けることです。解放するため重い 気分に集中し続けていたのを、今度は手放して軽くなった部分 に向け、どの程度解放できているかチェックしてください。
私達は集中している部分をより大きく感じます。よく例に出 されるのが記念写真です。雄大な自然をカメラで撮影し、後ほ ど現像してから確認すると、もう雄大に感じられないというも のです。まあ、現在はデジタルカメラが主流ですから、これを 感じる人は少ないかもしれません。
写真を撮った現場では、直接風景を見ています。この時、自 分が感動している風景の一部分に意識を集中しています。する と、集中している部分は実際の大きさより大きく壮大に見え ます。ところが現像済みの写真で見ると、実際の大きさにしか 見えないため、雄大さを感じられないのです。これと同じ現象 が、感情や感覚にも起きます。
夏に蚊に刺された時のことを思い出してください。なにか面 白いテレビや映画に夢中の時は、痒さを感じません。しかし、 刺されたことが分かり、刺された部分に意識を集中すると、た まらないくらい痒く感じます。傷の痛みでも似たような経験を されている方は多いでしょう。
リリースするために感情に注意を向けているとき、その感情 をより強く感じます。リリースの決断を行うことで強さは半分 になったとしましょう。しかし、意識を向け続けることでそれ が80%くらいの強さに感じてしまい、消えたのはほんの2 0%で、まだほとんどリリースできていないと判断することに なります。
さらに、リリースが進んだとしましょう。残っているのは2 0%です。後はほうっておいても消え去る可能性があります。 消えた部分に注意を向ければ、「最初より、だいぶ軽くなった ぞ」と思えるのに、残っている20%に集中すれば「ああ、ま だこんなに残っている。」と感じます。軽い部分を意識すれば、 リリースが起きていることが実感でき、その実感によりさらに リリースが進みます。実感がリリースを促進するのです。それ とは逆に、重い部分に集中してしまえば、考えるのはリリース に対するネガティブな思いです。それは自分に「リリースでき ない」と感じさせるだけです。リリースできないと思ってしま えば、その重い部分を解放することはできません。なぜなら、 あなたがそう思っているからです。
また、感情のリリースには時差があります。もちろん、これ には個人差も存在します。自分の子供を近所の子供と遊ばせた ことがある方なら経験しているでしょう。片方の子供が、自分 のおもちゃを取られて泣いてしまいます。そのおもちゃを取り 返し、渡してあげると子供はそれを認識して受け取とります。 渡した瞬間に泣き止み、笑顔に戻る子供もいます。また、表情 から取り返せてて安心したのは読み取れますが、しばらく泣き 顔が続く子供もいます。可能性としてその子は、感情を引き伸 ばすことを既に覚えてしまっているかもしれませんが、そうで はなく、感情が収まるまで時差があるのかもしれません。
私は怒り、恐れ、悲しみは動物も持っている本能的な反応で あると思っています。人間は状況を思考、判断することで、こ のスイッチを入れることができるのでしょう。神経の伝達物質 とか、ホルモンとか言われる物質が関連しており、そうした反 応の持続時間は多少個人差があって当然だろうと推測していま す。
ですから、思考による反応の結果としての感情や感覚は持続 しがちの人もいるという前提を持っています。リリースは主体 的なものです。自分で「手放せた」、「もう影響を受けていない な」、「こだわっていない」と感じていれば、リリースが起きて います。しかしながら、一度感情のスイッチを押したことで発 動した、特定の感覚が持続してしまうため、その判断が遅れる ことがあります。
判断が遅れ、開放できていても手順を続けると、意識的もし くは無意識に、今度は「なんで続けるのだろう」、「もう変わら ないのに」、「続けたくない」、「もう無駄だろう」という抵抗が 生まれてしまいます。それでも突き進めば、抵抗は強くなり、 状態は悪化し、泥沼にはまることになります。
それを防ぐために、残っている部分でなく、解放して軽く なった部分に集中してください。軽くて自由になった部分に集 中すれば、今度はそれが実際より大きく感じられるでしょう。
その感覚に集中し、「手放せた」、「もう影響を受けていな い」、「こだわっていない」、「気分が良くなった」と感じられて いるのでしたら、それ以上、手順を進める必要はありません。 多少、感覚が残っていても「気にならず」、「放っておこう」と 思えるのであれば、問題ありません。
もし、しばらくたっても感情・感覚が持続するようでした ら、再度手順を繰り返せばよいだけです。こちらのほうが、や りすぎの状態を修正するより簡単です。やり過ぎを繰り返すと 自分のリリース能力に疑いを持ち始め、その疑いによりリリー スできなくなりかねません。私達日本人は、真面目すぎるきら いがあり、手順は全部やらないと気が済まない人も多いので す。ですが、やり過ぎは禁物です。リリースに関しては、目的 志向になってください。リリースという目的が達成できたら、 それで良しとしてください。
逆に、リリースできた部分に意識を集中しても、強い感情や 感覚が残っていたり、重いネガティブな部分に気を取られた り、リリースできている実感が少しも湧かなかったりするので あれば、解放されていません。手順を続けます。 続けることに抵抗を覚えたら、やりすぎたことへの抵抗を調 べて下さい。やりすぎた抵抗を見つけたら、それらをリリース しましょう。リリースすれば、元の感情は手放せていると実感 できるでしょう。
手順に慣れると、この確認ステップは、決断ステップ、次の 強化ステップと一連の流れで行えるようになります。例えば、 リリースの決断をしたら、すぐに自然と軽くて自由になった部 分に注意を向け、リリースできているかチェックするようにな るでしょう。
4.強化ステップ
十分に強く、明確に決断できれば、感情をリリースできま す。まだ残っているのであれば、その感情を持ち続けたいとい う過去の決断のほうが、リリースするという決断よりまだ強い という状況です。
リリースするぞという決断があっても、一発でリリースでき ないならば、その決断が十分に強く行われていないというだけ です。ですから、もっと強くしましょう。それが、このステッ プです。
強化するためには以下の3つを強くします。
- リリースの実感
- リリースしたい希望
- 決意自体
この3つの合計が、持ち続けたい欲求よりも大きくなった時 にリリースが起きます。この3つの要素を強くする、補助的な 手段を取ることで、リリースしましょう。
補助的な手法はたくさんあります。以降の方法は単独でも、 他の手法と組み合わせても使いやすいものを紹介しています。 似たような心のネガティブの解放について既に出版されている 書籍を参考にしたり、ネット上の手法を参考にすることもでき ます。また、自分だけの手法を編み出しても良いのです。
自分だけの方法を編み出すときには、頭だけで考えず、実践 しながら工夫しましょう。頭でっかちになり、複雑になりすぎ た手法は、たいてい役に立ちません。リリースの経験を積んで いけば、段々とシンプルになるでしょう。
以降で紹介する方法では、なぜ効果的なのかという理屈を説 明していません。私たちは柔軟な思考、応用力を持っているた め、理解するために様々な仕組みのモデルを受け入れてしまい ます。しかし、どんなに理屈をひねり出したところで、効果の ある人もいれば、全く感じられない人もいるのです。頭で考え る理論が正しくても、リリースは起こせません。実践して効果 があれば、それがあなたにとって正しい方法です。
強化のポイントになるのは、「リリースするために何かを 行っている」という納得感なのです。リリースは精神的なこと であり、主観的です。ですから、リリースすると決意すれば、 それだけで本来起こせるものですが、最初は無理なのです。私 達は物理的で法則や決まりに満ちた世の中に生きています。心 の仕組みもこうした世の中の現象を参考にして理解しており、 そのために手間や苦労、努力と表現される物理的な何かをしな いと納得できないのです。納得できなければ、実感を得ること ができません。
ですから、リリースの補助にはどんなことでも使用できま す。物理的とは、時間と手間をかけて何かを行うことと、ここ では理解してください。時間と手間をかけることにより、自分 がリリースに向け「ああ、努力している」と納得でき、それが リリースの実感を強め、開放しやすくしてくれます。
しかし、どんなことでも良いからと言っても、感情から目を 背けるために行うのは、解放ではなく、逃避です。行なってい る間中、ずっと手放したい感情と直面しているのでしたら、そ れは解放です。その感情を感じないように、別のことに注意を 向けるのでしたら、逃避です。
この強化のステップは、補助であることを忘れないでくだ さい。リリースに上達すれば、決意でリリースできるようにな り、このステップは行う必要なくなるでしょう。
なお、以降で紹介する方法は、順番に行うものではありませ ん。自分にとって効果的なお気に入りの方法が見つかれば、そ れを繰り返してください。状況に合わせ、複数を組み合わせて もかまいません。あなただけの方法を行なってもかまいませ ん。
しかし行いたければ、順番に試してもかまいません。特に、 自分のやり方が見つかっていない初心者が、順番に実行してみ るのは、ピッタリあった有効な方法を見つけ出す一つのやり方 です。ただし、この本で紹介している順番には意味がないこと を覚えておいてください。
どんな方法をとっても、確認ステップを忘れないようにしま しょう。
1.受け入れる
感情や感覚をそのまま受け入れることは、リリースの基本で す。
私達は一度抑制し、抱え込んだ感情は、素直に受け入れな いことが多いのです。笑い話や落語、コントで度々見られるシ チュエーションがあります。怒っている人に何で怒っているの か訪ねます。すると相手は、「怒ってなんていない」と怒鳴り 返すのです。定番ですね。
子供もこうした反応をしますよね。怒っている、泣いてい る、怖がっているのを指摘すると、「怒ってない」、「泣いてな い」、「怖くない」と反論することがあるでしょう。子供の頃か ら、感情を抑圧しようと努力していると、その感情を素直に認 めない習慣を持ち始めます。
100%そこにある感情を感じましょう。感じ切りましょ う。感じ切ることで解放されます。
そのために必要なのは、まずその感情の存在を認めることで す。感情による圧迫感や不快感を感じているのに、ぼやっとし て感じ切れないのは、その感情を既に「無いもの」として否定 してしまったからです。無いものと否定し、目を向けることを 拒む決意を既に行なっているがために、十分感じられないので す。
「自分はこんな事で怒らない」、「ダメだと分かっていたので 悲しくなんか無い」、「俺は男だから怖がらない」
私達は様々な理由をつけ、自分の感情を遮断してしまいま す。でも、怒ってもいいんです。悲しくなってもいいんです。 怖がってもいいんです。感情を感じることを否定してはいけま せん。
自分は怒っている、悲しんでいる、怖がっていると認めてく ださい。それから、感情に直面しましょう。ぼやっとしていた 感情を、より強くはっきりと感じられるようになります。
次に、そのまま受け入れましょう。ありのまま、十分に感じ ます。コントロールしたり、消そうとしないでください。浮か び上がってくる映像や相手の声、頭の中の判断、言い訳、何で もかんでも、そのまま受け入れましょう。どんなに強い感情で も、段々弱くなり、やがて消えていきます。
2.息と一緒に吐き出す
シンプルなイメージ法を利用してみましょう。
今感じている感情による感覚を、視覚イメージとして捉えま す。かたまり、渦巻いているエネルギー、燃え盛る炎、ドロド ロした液体、錆びたチェーン、何千もの針が体の内側に刺さっ ている場面、凍りついた空気、何でもかまいません。ピッタリ 感じられるイメージで捉えてください。
少し呼吸をゆっくり、大きめにしましょう。吐く時の空気の 流れに従い、イメージも吐き出しましょう。呼吸に合わせ、何 度か流し出してください。
3.緊張を解く
私達は特定の感情に対して、決まったポーズしたり、決まっ た筋肉を緊張させる癖を持っているものです。そのポーズや、 筋肉の緊張が、逆にその感情を固定してしまうのです。おきま りのパターンになってしまうのです。
私もそうですが、緊張すると腕を組み方は多いと思います。 そんな時、腕組みを解くと、緊張も少しほぐれます。腕組みと 同時に肩や背中の筋肉にも力が入りがちになります。気がつい たら、少し動かし力を抜いてください。それだけでだいぶ緊張 はほぐれます。
さて、緊張は実のところ失敗への恐れですよね。感情です。
同様に、怒っている時や、悲しい時にも癖が出るんです。具 体的な顔や声の表情は、普段と違いは無いけれど、一見してそ の人の感情が分かることがあります。ポーズや筋肉の緊張は、 人それぞれですが、長年付き合っている人物であれば、姿を見 れば感情を読み取れるでしょう。
そうした感情を抱いている時の癖を自分で見つけ出します。 自分がどんなポーズを取っているか確認してください。体中の 筋肉の緊張をチェックしてください。顔の表情筋にもチェック しましょう。歯を食いしばったり、頬の筋肉が緊張していない かチェックしましょう。
癖を見つけたら、それを解除してください。ポーズは崩し、 緊張している筋肉は少し動かし、ほぐしましょう。それによ る、感情の変化に注目してください。
4.選択を繰り返す
持ち続けるか、それとも手放して楽になるかの選択を繰り返 しましょう。対象を感じ、毎回新たな気持ちで選びましょう。
お気に入りの同じ質問を繰り返しても良いですし、質問のバ リエーションを用意して順番に尋ねてもかまいません。
- 「持ち続ける?リリースする?」
- 「こだわり続ける?それとも、こだわりを捨てる?」
- 「不幸でい続ける?それとも、幸福になる?」
- 「感情にコントロールされ続ける?それとも、自分の感 情の主人になる?」
- 「感情に操られ続ける?それとも、感情を自由に操 る?」
- 「固執し続ける?それとも、自由になる?」
- 「苦しみ続ける?それとも、楽になる?」
- 「関わり続ける?それとも、放っておく?」
- 「影響を受け続ける?それとも、影響を受けるのをやめ る?」
この方法は、直接的に決断をだんだん強くしていく方法で す。ですから、決断だけで手放せるようになるための練習にも 使えます。
5.イメージを使う
既に呼吸を使用する方法で説明したように、イメージ方はリ リースに応用できます。
感情のある場所にチューブを差し込み流れださせる方法や想 像上の窓を開き、そこから放出される方法はアメリカのリリー ステクニックという解放法で紹介されています。感情をロケッ トにして飛ばす方法は日本人の方が紹介しています。
イメージ法は感情をどう視覚化するかでバリエーションが作 りやすいのです。自分の想像力を使い工夫することが簡単に出 来ます。私も、かなりのパターンを作りました。感情をエネル ギーの渦と捉えたり、重たい塊、大きな鉄の玉、錆びた鎖、ド ロドロした真っ黒した液体などに視覚化しました。それを感情 により発生した感覚を感じている部分から、体の外へ放出して いるイメージを使いました。
一番使用したのは、感情をミサイルにして飛ばす方法です。 大きなミサイルにしたり、小さなミサイルを連発したり、飛ば し方も感覚に合わせ自由に変化させ、自分に影響が及ばないと 思える距離で爆発させます。爆発するときの閃光や煙の色、爆 発音も感情に合わせて、自由に変化させました。
初めての方が行うのでしたら、掃除機をイメージすることを おすすめします。皆さん、掃除機には親しんでいらっしゃるで しょうし、どんな働きをするかよくご存知でしょう。簡単にイ メージできます。
感情や感覚を思い浮かべたら、そこに想像上の掃除機のス イッチを入れ、ホースの先を感覚に突っ込みます。そして、感 覚が吸い出されているところを想像してください。感じてく ださい。必要なら自分の中に掃除機のホースを突っ込むジェス チャーも使用してください。
6.一定のリズムを刻む
一定のリズムを刻みながら、開放しようとする感情や感覚に 注意を向ける方法です。
リズムの速さは一定を保てれば、多少早くても、遅くてもか まいません。意図的に変化をつける必要はありません。ただ一 定の感覚で、リズムを保ってください。どのくらいが良いか迷 うときは、自分の脈拍に合わせてください。拍動より、やや遅 いくらいがテンポを保ちやすいでしょう。
この方法を行うときは、まわりの方に迷惑にならないように 配慮しましょう。体の一部をポンポンと叩く方法でもかまいま せん。心の中で、一定間隔に音を聞いたり、「タン…タン…タ ン…タン…」と言葉にするだけでも良いのです。
一人で部屋にいるときは、机をコツコツと叩き、その音を聞 く方法が一番ラクに実行できるでしょう。
できるだけ一定の間隔を保ちますが、それに100%熱中し ないでください。開放しようとする対象の感覚を感じながら、 リズムを刻んでください。多少の困難さを感じるはずです。多 少の困難さを感じるのが、この手法のツボとなります。苦労し ている感じが、「リリースするために何かを行なっている」感 覚を強めてくれます。
リリースを難しいと感じる方は、意図せずに、リリースしよ うと直接努力、コントロールしようとして、解放できなくなり ます。スランプに陥った野球のバッターのようなものです。打 とう、打とうと思えば思うほど、力み、打てなくなります。
この方法は直接リリースしようとする努力の方向を、リズム を保つことに向けさせます。その結果、感情と感覚を手放そう とする力みが取れ、十分に受け入れ、シンプルに感じることが できるようになり、最終的に解き放つことができます。ですか ら、力み過ぎるタイプの方に適しています。
面白いのは、感情の強い部分に触れ、それを感じていると きはリズムが乱れます。リズムが乱れても気にしないでくだ さい。余計な後悔はリリースの妨害になります。「ああ、大き な感情がリズムを乱しているな。面白い。」くらいに楽に構え、 続けてください。
まるでお坊さんが、読経の際に木魚を叩くように、行いま しょう。試していただければ、一見ばかげたこの方法は、使い やすく有効なリリースの補助方法であると理解していただける でしょう。
ちなみに、この方法は体のツボを軽く叩く、タッピング系の 手法とは全く関係がありません。
7.エゴを説得する
自分自身と会話することに、違和感を持たないかたは、自分 のエゴを説得する方法もあります。
この場合のエゴとは、簡単にあなたが自分だと意識している 部分と、意識していない心の部分を合わせた、心全体だと考え てください。
リリースとは、エゴの無意識の部分を少なくしていく行為と も言えます。ですから、エゴの無意識に隠れている部分は、リ リースされることに抵抗して、様々な妨害方法を取ってくるか もしれません。「無理だ、無駄だよ」という思いや感じを意識 させるかもしれません。疲れさせたり、退屈させたり感じさせ るかもしれません。このような妨害が起きる可能性は大きいの です。ですから、私達は自分にとって良いと分かっていること でも、長続きさせられないのです。
また、あなたの感じている不快な感情を長続きさせているの は、あなたのエゴとも言えます。苦しくとも持ち続けている行 為は馬鹿らしいのですが、なぜか私達はそうしてしまうので す。
しかし、逆のエゴも私達は持っているはずです。楽で楽しい ことのほうが良いと考える部分も私達は持っています。この エゴの部分と協力し、持ち続けたいエゴを会話で説得しましょ う。
「この思いは離さない。絶対離さない。」
「もう離そうよ。楽になるよ。十分苦しんだんだよ。」
「これを離したら、あいつを恨むのも、やめなくてなならな い。」
「そうだね。けど、恨むのも苦しいだけだよ。いくら恨んで も、相手は気にしていないよ。こちらだけ長く気分が悪いまま になるのだから、その分損だよ。」
「離そうとしても無駄。とても重くて離せない。」
「大丈夫だよ。一緒にやろうよ。協力すればいけるよ。」
「やろうとすると、もっと大きく強くなる。気分が爆発するか も。」
「大丈夫。そのまま、そのまま。無理に止めようとするんでな く、ただ感じて、受け流すんだ。」
この方法は、あなたの感じているリリースに対する抵抗を言 葉にして表してみることとも言えます。
もし、自分自身と会話することに違和感を覚えたり、恥ずか しく感じたりするのでしたら、この方法は避けてください。自 分に無理強いすることはありません。
8.責任を認める
既に説明しましたとおり、感情を選び、起こしているのは自 分です。その責任は自分にあります。同じ場面に遭遇しても、 他の人は別の反応を取ることでしょう。それぞれの人が、自分 の感情を選択しているのです。
感情が浮かんでいるとき、明確に「この感情の責任は自分に ある。」と宣言してください。はっきりと認めてください。
感情に責任を認めるという事は、自分の感情をコントロール できることを認識させてくれます。自分のコントロール下にあ ると自覚できれば、コントロールを取り戻せます。
責任を認めるだけで、感情を軽くできるのです。ただし、口 先だけではダメですよ。本当に認めてください。
9.感覚を比較する
あなたの怒り、悲しみ、恐れを体のどこの部分で感じていま すか?たいての感覚は胸やお腹で感じ、一部は頭部は喉あたり にも感覚を覚えるかもしれません。
その感覚に集中してください。
次に、その感覚を持っていない部分に集中してください。例 えば、胃のあたりに感じているのでしたら、腕には感じていな いでしょう。
再度、手放そうとしている感覚に集中してください。
今度は、感覚を感じていない場所に集中します。前と同じで も、他の場所でもかまいません。
手放そうとしている感覚に集中しているときは、その重さ、 辛さを十分に感じ取ってください。存在していない部分に集中 するときは、その軽さ、自由さを味わってください。
どうです。持ち続けるのが馬鹿らしいと思いませんか。開放 してしまいたい思いがだんだん強くなりませんか。意識してそ う思う必要はありません。比べていれば、無意識にでもそう考 えることになります。
存在していない場所は、自分の体以外でも良いのです。机の 上にはあなたの感情は存在していないでしょう。財布の中にも 存在していないでしょう。目の前の木、道路、ビルには存在し ていません。あなたの目の前10センチの空間には存在してい ません。どこでも、かまいません。存在していない場所を見つ け、そこに集中しましょう。
ただし、感情が存在していない場所を探すときには、過去を 思い出したり、未来を想像したりしないでください。今現在 で、存在していない場所を見つけてください。
10.自由で軽い感じに集中する
あなたの一生で本当に幸福なことは一回くらいあったでしょ う。それを覚えているでしょうか。その時の幸福感を今現在感 じられるでしょうか。
もしくは、リリースがうまくいき、気分がとても良い経験が ある方でしたら、その時の感覚を思い出してください。
出来事を思い出す必要はありません。その時の感覚を、今現 在で味わってください。
その感覚を味わったら、手放そうとしている苦しい感覚を見 つめてください。なんの抵抗もなく、開放できます。
自由で幸福感を感じているとき、私達はこだわりを捨ててい るのです。ですから、自由で幸福でいる時間が長ければ長いほ ど、それを邪魔する心の制限を自動的にたくさん捨てているの です。
幸福でいることは、自動的なリリースを引き起こします。マ イナスの感情を見つけても、それを簡単に解放することができ ます。
11.思考を捕まえる
この後の章で説明しますが、感情は思考の集まりであるとL Lリリースでは考えています。
感情を解放するという事は、それを構成している過去のたく さんの思考をまとめてリリースしているという事です。
しかし、時に感情を手放せない場合、その感情を引き起こし ている大本の思考を見つけ出し、それをリリースすることによ り、感情も手放すことができます。
つまり、感情をつなぎとめている部分に集中攻撃を加える という事です。感情の手放しは、思考の手放しより効率的です が、塊になっている分、難易度はより高いのです。思考は、一 番基本的な制限で、その気になればすぐに手放せます。
ただしこの方法で困難なのは、解放すること自体ではなく、 隠れている思考を見つけ出すことです。大抵の場合、過去と 向き合う必要も起きるでしょう。潜んでいる思考を、意識上に 引っ張り上げてください。通常、見つけ出すと「そうだったの か」という感覚が起き、自然とリリースされるでしょう。
「何でこの感情にこだわっているのか?」、「持ち続ける目的 は何か?」、もしくは直接的に「どんな思考が大本にあるのだ ろう?」
質問は色々工夫できます。特に決まっていません。
他の手法と比べ、時間と集中を必要とします。ですから、こ の手法は繰り返す感情や、どうしても取りきれない感覚を解放 する場合に使用しましょう。時間を取り、じっくりと取り組ん でください。
方法は何でも良い
様々な手法を紹介しました。私のWebサイト(追記:このサイトのことです)ではもう ちょっと紹介しています。
再度繰り返しますが、強化策はどんな方法でも良いのです。 自分が納得できれば、効果が上がります。納得するために、時 に人は宗教やグッズ、セミナーなどに大金を払い、また荒行な ど身体に苦痛を与える修行を行います。自分を納得させるため にです。
しかし、あくまでも大切なのは、リリースするという決意で す。これなしに、何を行なっても効果を出すことができませ ん。
自分にあった方法を見つけてください。組み合わせたり、変 化をつけたり、自分のやりやすようにしましょう。経験からア ドバイスできるとすれば、余りにもやりやすいものは、納得感 が少なくなるため、強化策としては効果は薄いようです。
この本に書かれているから効果があるのではありません。実 際に試し、自分に効果があるものを選びましょう。役に立つも のを採用してください。
リリースした感覚
初心者のうち、迷うことの多いのが、手放した感覚です。自 分で解放できているかどうか、わからないのです。
リリースは主観的なものです。感覚は人それぞれ異なってい るので、絶対的な判断基準はありません。一般的には「より軽 く、より幸福、より自由」になっていば、その軽く、幸福に、 自由になった分、リリースが起きています。
この本の最初でリリースを定義つけています。その記述を参 考にしてください。自分がその感情から影響を受けているかど うかも判断材料になっています。完全にリリースできれば、全 く影響を受けないと自覚できます。定義にある状態に一つでも 当てはまるようになれば、リリースが起きている可能性はあり ます。ですが、例えばそれでもより不幸で、感覚も強まってい るのでしたら、開放できたとは言えません。
例え話を一つ。ゴミ箱にゴミを投げつけ、外れたとしましょ う。外れたゴミが気にかかるのでは、手元が軽くなっても、リ リースとは言えません。なぜなら、ゴミから影響を受けている からです。自分の手を見て、ゴミがない。ならばそれでいいや と思えているのでしたら、リリースと言えます。
一回のリリースで、完全に自由・幸福になれることは、めっ たに無いでしょう。状態は少しずつ向上していきます。ですか ら、一つの感情に手順を続けすぎ、やり過ぎないように気をつ けてください。
感情や感覚の持続時間にも気をつけてください。特定の感 情によって起きた体の感覚が持続しがちの方もいらっしゃるで しょう。最初のうちはちょっとしたメモを取り、自分の傾向を 知ることをおすすめします。
手放そうとしている対象によっても感覚は違います。次章で 制限の種類について説明します。一番小さい単位の思考は手 放しやすいですが、普通の思考をリリースしても、大した変化 は感じられません。逆に一番大きい塊の欲求は、いきなり初心 者では手放すのは難しいですが、リリースした時の効果を一番 感じられます。私がリリースの効果を本当に感じられるように なったのは、一番大きな思考の塊である欲求の手放しを行える ようになってからでした。
実行上の注意
リリースを義務にしないでください。
「問題を解決するために、リリースしなくてはならない」、「幸 せになるためには、リリースしなくてはならない」
しなくてはならないという表現は自分の抵抗を表します。私 達はよく、「税金を払わなくてはならない」と言ったり、思っ たりします。これは「本当は払いたくないんだ」という抵抗が あるからです。今、突然に税金のかからない収入が年収の10 倍手に入ったと考えてください。すると今度は、「税金でも払 うか」と心の中の表現は変わることでしょう。しなくてはなら ないという義務感を感じる言い方はしなくなります。
リリースを義務にしてしまうと、「本当はしたくない」とい う抵抗を持ちがちになり、その抵抗のためリリースできなくな ります。
リリースはシンプルで楽しいものです。「どんなことが起き るのだろう?」という遊び心で行なってください。たとえ今、 深刻な自体で楽しむ余裕なんて無いという事態であろうと、リ リースを行ったから事態が悪くなるというものでもないでしょ う。でしたら、どんな変化が起きるのか、興味を持ち、行なっ てもバチは当たりません。
気分を軽くするのがリリースの目的なのに、実行するのに気 が重いのでは、笑い話にもなりませんね。気楽に、気軽に試し てください。
やり損なっても後悔しない
レスター博士が、レクチャー中に生徒から質問を受けまし た。「できなかったときはどうすればいいですか?」
答えは、「ただ行いなさい。後悔する必要はありません。」
中村天風師が心の乱れの対処法について質問を受けま す。「やり忘れたらどうすればいいですか?」
答えは、「忘れていることに気がついたら、ただ行いなさい。 後悔してはなりません。」
両師ともに、同じ答えです。
もし、リリースし忘れたことに気がついたり、悪い感情を表 現してしまったとしても、後悔する必要はありません。後悔を 感じたのであれば、それもリリースしましょう。
気付いた時が、リリースどきです。それを長引かせるのでは なく、すぐに対処しましょう。
リリースできない人
リリースできない理由はいろいろあります。
例えば、今取り扱っている感情が重すぎて、現状のリリース 能力では実力不足なのかもしれません。最初は、開放しやす い、軽い感情から始めるのが良いですね。何事も、自分のレベ ルに合わせて挑戦していくのが、上達のコツです。
また、体が風邪でだるい、寝不足で頭がすっきりしないとい う状況であれば、リリースできるほど集中できないでしょう。 あなたが上級者であれば、精神的な疲れや空腹、多少の肉体的 な疲れ、弱い痛みなどもリリースできます。ですが、そこまで リリースが進んでいないのでしたら、まず十分に休息を取って ください。
また、自分の感じ方に責任を取らない人は、リリースできな いことも既に説明済みです。
あと2パターンほど、リリースできない人があります。この タイプの人には、リリースを勧めても無駄な努力に終わるで しょう。もしくは、効果を出せるまでになるにはとても苦労が 必要になります。
一つは「オレにはリリースなんて必要ない」というタイプの 方です。自分の強さに自信を持っている人です。リリースなん ていう心の解放のテクニックに頼るのは、弱い人間がやること だと信じています。
スタート地点、幸せになりたいのかという質問にも、多分 「いいえ」と答えるでしょう。もしくは「はい」と答えますが、 本当に考えて出した答えではないでしょう。
こうしたタイプの方は、「こういうものは効果がない」こと を証明するのに躍起になります。初めから、効果がないことを 証明するつもりなのですから、効果が出るわけありません。
このタイプの人は自分の決断や行動で、まわりの人がてんて こ舞いになるのを密かに楽しむところもあります。自分が強引 であることもわかっていますが、それでもまわりの人間が動く ことで、自分の力、強さを感じ、喜んでいるのです。
時が来て、周辺の人々から協力が得られなくなり、自分だ けではにっちもさっちも行かなくなり、とことん困り果てて、 どうしようもなくなるまで、リリースは手助けできないでしょ う。自分の強さが本当のものではなかったと自覚したところ で、やっとリリースが役立ちます。
もうひとつのパターンは、「私のこの感情・経験は特別だ」 という人です。既に説明済みですが、もう一度取り上げてみま しょう。暗い過去やつらい記憶が既に自分のアイデンティティ になっているタイプの人です。そのアイデンティティを守るこ とに必死になっている人々です。
非難を受けることを覚悟で書きましょう。日本はこの数十年 で2回、大きな震災に見舞われました。
地震後、数週間で避難先に生活の拠点を移すことを決め、住 所を移動し、仕事を得るなど、すぐに行動に出た人達がいま す。もちろん生活のために、住み慣れた場所や家を離れる決意 をしたのであっても、その決断の速さ、土地や人にこだわらな いこうした人々は本当に尊い存在だと思います。彼らがどんな 仕事をしているのであっても、この国の礎となっている人達で す。
一方、土地に固執し、昔のコミュニティーに執着する人がい ます。さらに、自分の被害者の立場に縛られ、全て受け身で、 文句だけを言い続けている人達もいます。テレビのニュース番 組で、自分がどんなにひどい目にあったか、いかに支援が足り ないかカメラに向かって力説します。もちろん、報道する立場 の人は、そうした視聴者受けする人を選びます。
もちろん、国や県、市、役人のやっていることは、非効率で ばかばかしいこともたくさんあります。非難は当然だろうとも 言えます。
しかし地震の被災者、原発事故の被害者だと言い続け、それ に固執するかぎり、幸せにはなれません。なぜなら、自分から 選ばないからです。自分は不幸だと言い続けなければならない からです。
これほど、大きな天災でなくても、事件や事故、災害の被害 を被ることはあります。ですが、すぐに立ち直る人と、いつま でも影響を受け続ける人がいるのです。もちろん、すぐに立ち 直れる人は幸福で、いつまでも引きずる人は、その分だけ不幸 です。
自分の経験、それによって生まれた感覚や感情は特別なもの であると本人がしがみついているのであれば、引き離すことは できません。
たとえどんなに元の出来事が自分の力でコントロールできな かったとしても、その経験に自分でしがみついている事実、そ のために不幸であり続けている事実を本人が認識し、それを手 放して幸福になることを選ぶまで、状況は続きます。
もし、あなたの助けたい人が、自分の経験にしがみついてい ると理解したのでしたら、リリースはかなり難しいと最初に理 解しておきましょう。そして、最初の「自分で幸福になること を選ぶ」点に集中し説得しましょう。出来事、経験にしがみつ いている時間は不幸であることを認識させましょう。それを手 放し、昔のように幸福な気分を取り戻せるのであると、理解さ せましょう。この最初のステップに時間をかけることが、鍵と なるでしょう。
韓国の慰安婦、日本の原爆被害、ナチによるユダヤ人虐殺、 さらに大戦後も虐殺の歴史は続きました。今も続いています。 語り継がれる悲劇はどこの国にも存在するでしょう。日本も韓 国も、毎年のように駐留米軍の引き起こす強姦事件で、今も傷 つき続けています。
被害者であり続ける人々がいる一方、出来事は覚えていて も、感情的なしこりを解き放ち、幸せに過ごしている方々もい らっしゃいます。こうした本当の人間の強さや素晴らしさを持 ち合わせた人が、マスコミに取り上げられるチャンスは、不幸 でい続ける人々より、はるかに低いのです。私達がマスコミを 通して、こうした人々の存在を知る機会は、とても低いので す。
さらに「あの悲劇を忘れてはいけない」と直接的な被害者で もないのに、被害者の話を聞き、マイナスの思いを引き継ぐ人 達もいます。一般的に同情心は美徳と考えられています。しか し、一時的なものであるならともかく、恨みつらみを引き伸ば し続け、そのせいで自ら不幸にはまりこんでいます。ネガティ ブな思いを引き継ごうと、問題は解決しません。
自国のマスコミはこうした悲劇を伝え続けている人を立派 だと褒め称えます。たしかに貴重な歴史の証人でしょう。しか し、人間は過ちさえ学習するのです。怒りや悲しみ、恐れを伝 えていけば、今度はそれを利用しようとする人達が出てきま す。例えば残念ながら、原爆の恐ろしさを喧伝すればするほ ど、武器としての核の優秀さを知らしめていることになりま す。ですから、原爆はなくなるどころか、他の国から自国を守 る「防衛手段」という名前のもと、世界中に拡散しているので す。
あなたが不幸だからといって、他の人を不幸にするのは卑し いこととされています。逆も真なり。他の人が不幸だからと いって、あなたまで不幸になる必要はありません。
間違いなく、遠い将来、大きな戦争や虐殺、大量殺戮や戦 争、大災害、それによる悲劇は、教科書に一行で説明されるだ けの出来事になるでしょう。私達が現在、たった一行の記述と して読んでいる歴史上の出来事にも、多くの悲劇が存在してい たことでしょう。ですが、今ではそうした事実があったと、感 情を引きずっている人はいません。いくら思いを後世に伝えよ うとも、歴史の一ページになり、一行になり、やがて忘れ去ら れます。
出来事とはそういうものです。私達が経験する、一般的な出 来事は教科書に載ることもありません。そんな出来事のため に、あなたが長い間不幸でいる必要はありません。抜け出ま しょう。
非難を受けることを覚悟して書かせてもらいました。本来リ リースは被災者や被害者で、不幸せにはまりこんでいる人々に 役立ててもらいたい技法です。どんな状況であれ、不幸でい続 ける必要はありません。ですが、経験が余りにも強烈ですと、 それにしがみつき、幸福になることを忘れてしまうのです。
どんな状況であっても、どんな経験をしたのであろうと、一 刻も早く目的地を幸福に切り替え、不幸から抜け出しましょ う。具体的に何かを行う必要もありません。心を切り替えるだ けです。決断だけが必要なのです。
思い出してください。あなたは出来事の被害者であったかも しれませんが、自分の感情や感覚については、加害者なので す。「もう、こだわらない。」その決断だけが必要です。
(次章へ続く…)