かつて、電子書籍出版サービスであるLeanpubから出していた、「放り出せば、楽になる」という私の書籍をサイトでも公開することにしました。

内容は、このサイトで解説してあるものと内容は同じです。Leanpubのシステムを利用したのは、読者が値段をつけられるシステムになっていたからです。

無料で読んでいただいた方々は多いのですが、実際に有料で購入していただいたのは3人だけでした。メンテナンスの手間もかかりましたので、販売は中止しました。

しばらく忘れていたのですが、数日前ふとしたことから目に止まり、内容を読んでみると結構よくまとまっていると自画自賛したので、このまま眠らせておくのももったいないと思い、公開することにしました。

この書籍にまとめたのは10年前です。今も私の考え方は変わっていません。ただ、細かい箇所は変更したほうが良いかと思いますが、あえて古いまま公開します。

面白いのが、当時はラリー・クレーン氏のリリーステクニックの音声や書籍には、まだあまり手を出していなかったのに、今読んでいる彼の書籍での書き方が、この書籍で自分が書いたものとそっくりでした。読者を良い方へ誘導しようとすると、どうしても似てしまう部分はあるかと思います。しかしながら、ヘイル・ドゥスキン氏の誘導方法とは似ていません。もともと、ヘイル氏は癖のない方なので、似ていても自分では気づきにくいかもしれません。

もし、この書籍、もしくは当サイトに何らかの価値を見出された方は、PayPalの送金リンクを貼っておきます。感じられた価値の金額を寄付していただければ、幸いです。

PayPalによる寄付/購入

なお、前述のとおり、Leanpubはすでに使用していないため、改定したい場合はこのサイトの内容を変更します。(原則改定しません)


放り出せば楽になる

前書き

怒り、悲しみ、恐れといった、不快な感情を素早く開放しま しょう。人生で少しでも長く、幸福でいましょう。

これはLLリリースという、心の制限を解放する手法の一つ を、一般の方向けに解説したものです。

世の中には本が多すぎます。たとえ有益な書籍であっても、 あなたには合わないかもしれません。多くの人に役立つよう にこの本を書きましたが、内容を受け入れられない人もいらっ しゃるでしょう。

ですから、まずお読みください。書店で購入するときのよう に、立ち読みし、内容を確認してください。Amazon などの 通信販売ではプレビューである程度の内容を読むことができま す。それと同じです。

しかし、これは無料の電子本ではありません。後払いの電子 本です。読んで実践していただき、お役に立ち、気に入ってい ただけましたら、購入してください。

値段もあなたにお任せします。世の中に存在する本とくら べ、どのくらいお役に立ったでしょうか。この本がもたらして くれた結果に、いくらの価値を見出すでしょうか。

この本が提供する情報ではなく、あなたの得た結果に対して 値段を付けてください。妥当な値段で購入していただけると、 私はあなたを信用しています。

また、情報は段々と古くなっていきます。そのため、常に書 き換えられることも求められます。情報を新鮮に保つためには 手間がかかります。無料の情報は数は多いですが、生きてはい ません。呼吸していません。更新されておらず、すぐに腐って しまいます。そのためインターネット上には既に腐ってしまっ た情報がうようよ存在しているのです。

この電子本を有料にするもう一つの理由は、書きっぱなしの 本とは異なり、必要に応じて内容を改定し、情報を付け加える からです。大きな変更は必要ないと信じていますが、誤字脱字 が気になるとか、もっと説明が欲しいなどの要望がありました ら、hirokws@gmail.com までご連絡ください。誤字脱字は すぐに修正します。説明不足の部分はコンパクトさを失わない 程度に、対処したいと思います。

購入していただいた方には、出版元のLeanpub のシステム により、改定時にメールで通知されます。

最終章の解放のリストについてもリクエストをお待ちして います。新しく追加したリストは、まず購入版にのみ掲載しま す。新しい追加リストが多くなったら、追加したものの中から いくつかは無料版にも掲載する予定です。さすがに、無料サン プルと購入版が全く一緒では、いささか不公平ですからね。も ちろん新版は無料でダウンロードしていただけます。

もし、この電子書籍がお役に立ち、気にいって、購入し ていただけるのでしたら、ブラウザでhttps://leanpub.com/ letgoを開いてください。「この本を購入する」ボタンをクリッ クすると購入ページヘ移動します。そこで値段をお決めくださ い。

気に入ったけれど、今すぐには購入できないとお考えなら、 どうぞ購入は延期してください。できる時に、購入していただ ければ結構です。

 世の中の書籍の多くは、売り手や書き手が、どうやって読者 を騙そうかと画策しています。私たち読者も騙され続け、疑 心暗鬼になり、書物を購入しなくなってきています。そんな中 で、たまには著者が読者を信用する本があっても良いと思いま す。

多くの人がお読みになり、試していただき、心を軽くして幸 せに人生を送るヒントが得られることを願っています。感情に 操られるのではなく、感情の主人となりましょう。幸せに感じ ることは、難しいことではありません。

この本の内容が難しく感じられるのは、読むだけで実行して いないか、リリースに幸福や自由以外のものを求めているから です。心をより軽くする目的で行うのなら、リリースは手軽な テクニックになります。

この本の内容で、特定の問題を解決したり、特別な能力を 得ようとしても、難しいでしょう。もし、こうした目的をこの 本に期待していらっしゃるのでしたら、これ以上お読みになら ず、別の書籍を探してください。リリースにはそうした効果も 期待できますが、この本のでは感情の解放に主眼を置いていま す。

この本はシンプルに、今感じている悪い感情を解き放ち、気 分を改善しましょうという電子本です。

(肩書き)普通のおじさん 川瀬 裕久

序章

最初のリリース

 さて、この本を手にして、お読みいただいているということ は、なにやら気分が良くないのですね。もし、気分がよろしい のでしたら、読み進めていただく必要はありません。

 これはタイトル通り、怒りや怖れ、悲しみを投げ捨て、気分 を楽にしましょうと、お誘いする本です。

 話はさておき、早速試してみましょう。実践第一です。ま ず、軽くリラックスしてください。肩や腕などを軽く回しま しょう。体は緊張していませんか?力が入っている箇所は意識 的に抜きましょう。気分も、少しだけ楽にしましょう。できる だけで、かまいませんよ。

 では、お尋ねします。

「その気分を持ったまま、しばらく重い気持ちでいたいです か?それとも、放り出して気分が良くなりたいでしょうか?」

 ふざけてなんかいません。真面目な質問です。ですから、き ちんと自分に問いかけ、しっかりと考えて選んでください。

 二つの道があります。

 一つはその気分を引きずったまま、一時間後、今日中、もし かしたら一週間後もずっと気分は悪いまま過ごすのです。

 もうひとつは、重たい気分を放り出して、今から良い気分で 過ごすことです。

 理性と呼ばれる自動返答装置が、実は考えもせず「当然、気 分が良いほうがいいに決まっているじゃないか」と答えを出し ても無視してください。

 逆に、「ばかばかしい」、「答えても無駄」、「騙されるな よ」、「どうせ効果がないよ」という声が聞こえてきて、抵 抗感を覚えても、しばらくは無視してください。

 短い時間でかまいません。十秒でかまいません。時間を取 り、本から目を離し、本当に考えてください。どちらを選び ますか?気分が悪いまま時間を過ごしたいですか?それとも、 一刻も早く良い気持ちになりたいですか?真剣に選んでくだ さい。

 もし、持ち続けることを選んだのでしたら、残念ですがこれ 以上読み進めるのは時間の無駄になります。ここで読むのは止 めてください。どうぞ、苦しみ続けてください。あなたの人生 です。あなたの選択です。あなたには選択の自由があります。

 苦しいのはあなたで、それを選んでいるのもあなたです。そ れがあなたの本当の選択であるのでしたら、仕方がありませ ん。いつか、本当に幸せになりたいと決断したら、その時には お役に立てるでしょう。苦しいのに飽きるまで、そのままでお 過ごしください。

 おや?

 読み続けてくださるのですね。それなら重い気持ちを放り出 し、ハッピーになることを選ばれたのですね。あなたは聡明な 方です。

 ここで、一度しっかりと自覚してください。あなたは、気分 を解放し、幸せになることを自分で決断しました。これがと ても重要なことです。自分で決めたのです。

 では続いて、あなたを重い気分にさせている怒り・怖れ・ 悲しみに注意を向けましょう。深刻ぶらなくてもいいですよ。 さっと注意を向けてみます。

 チェックしてみましょう。怒り・怖れ・悲しみが湧き上がっ てきて、「怒っちゃいけない」、「怖れちゃいけない」、「悲しん じゃだめだ」なんて制止しているのでしたら、それは捨て去っ て下さい。

 怒ってもいいんです。怖れてもいいんです。悲しんでもい いんです。

 私は、できもしないことを、他の人におすすめするほど、い い加減な人間ではありません。とても立派な人間とは言えない のですが、まあまあ正直な人間です。

 感情をコントロールすることは可能です。でも、大抵の場 合、コントロールとは押さえつけて、無かったことにすること を意味します。悪い感情を発生させないようにコントロールし ているのではなく、起きてしまった感情を表に出さないよう、 押し殺しているだけなのです。

 既に発生した感情を抑え込み、「怒っていない」、「怖れてい ない」、「悲しんでいない」と自分に暗示をかけてみても、感情 からの影響を受け続けるばかりか、かえって長引かせることに なるだけです。

 でも、周りを見渡し、他の人がいるようでしたら、それを表 に出すのは我慢しましょう。あなたが不幸だからといって、感 情をぶちまけ、他の人に不幸のお裾分けをすることはありませ ん。それでは、テロリストとやっていることに違いはありませ ん。自分が不幸だからと言って、他の人を巻き込む必要は無い のです。たとえ目の前の人が、悪い気分を引き起こした張本人 であってもです。

 もしたった今、自宅で独りきり、部屋にこもっているのであ れば、自分の感情を表現するかどうかは、皆さんにお任せした いと思います。

 まず、その悪感情を見つめましょう。あなたは、それを放り 出すことを選びました。覚えていますよね。その感情を握り締 めることをやめ、自由にして、もう影響を受けることも止める と決断したのでした。

 では、ありのまま、そのままに、ただその悪感情を抱いてみ ましょう。必要なら目を閉じてください。感情はどこで感じる でしょうか。どんなふうに感じますか。押し付けられる感じ でしょうか、塊としてでしょうか?それともエネルギーが動き 回っている感じでしょうか。感じてください。

 感じるときに、抑えこんだり、無視したり、コントロール しようとしないでください。あなたはそれを手放すために、 今感じているのです。そのためにも、ありのまま、浮かび上 がってくるままに感じましょう。強くてつらい感情も、通りす ぎるまま感じていれば、段々と弱くなっていき、やがて消え てしまいます。

 感情や体の感覚と一緒に浮かび上がってくる原因となった 場面、そこでの会話、周りの音、頭の中に浮かんだあなたの考 え、何でもありのまま受け入れましょう。何も変える必要はあ りません。改めて今、気持ちを正当化したり、自分を責めた り、状況を解釈したりしなくていいんです。だって、あなた は捨て去ることを既に決めているのですから。

 ありのままに受け入れていれば、こんなに苦しい気持ちを持 ち続けるのは馬鹿らしいことであり、もっともっと手放したく なるでしょう。その思いのままに、解放しましょう。もう、こ の感情にこだわるのは止めましょう。しばらく、感じ続けてく ださい。

 どうでしょう?どの位「軽く」なりましたか?

 どの程度、その重い感情が残っているのか、尋ねているので はないことに、気をつけてください。

 この本を読み始め、浮かんでくる感情を見つめ、その重さを 感じ始めた時と比べて、今どのくらい軽くなっているのかを 尋ねています。

 この本を落ち着いて読み進めることが出来る程度に、軽く なっていますか?それなら、結構です。ここで終了し、この後 のステップを行う必要はありません。

 軽くなった分、リリースが起きたのです。あなたがリリース したのです。リリースは「解放、解き放つ」という英語です。 日本でも野球のピッチングでボールを離すこと、歌手が新しい 曲を販売すること、一度釣った魚を海や川に戻すことなどを意 味する単語としても使われますね。

 まだ、この本を落ち着いて読み進められるほど、楽になっ ていないのでしたら、もうちょっとやってみましょう。それで は、残っている感情、感覚に注意を向けてください。

 再度、この悪い感情を手放すと、既に決めていることを思い 出してください。必要であれば、選び直してください。持ち続 けて苦しみますか?それとも投げ捨て、楽になりますか?

 私たちは、ある感情、感覚を抱いているとき、特定のポーズ をとったり、ある筋肉を緊張させたりする癖を持っています。 自分の体を点検してください。どうです?見つかりましたか?

 見つかったなら、そのポーズを崩し、筋肉の緊張をほぐして ください。顔の表情にも気をつけてください。こわばっていま せんか。リラックスさせてください。

 ではもう一度、その感情、感覚に注意を払ってください。

 出てくる感情、感覚はそのまま、ありのまま受け入れます。 無視したり、押さえ込んだりしないでください。ただ、浮かび 上がるままに眺めていましょう。しばらく、向かい入れ続けま しょう。なにもする必要はありません。ただ、しばらく素直に 感じていてください。

 チェックしてみましょう。どのくらい軽くなりましたか?も う、落ち着いて、この本の続きが読めそうですか?まだでした ら、さらに続けましょう。

 今度は、残っている感覚を、息と一緒に体の外へ吐き出すイ メージを使ってみましょう。静かに息を吸い込み、吐きながら 残っている感覚も一緒に出て行くイメージをしてください。数 回繰り返しましょう。

 チェックしましょう。やりすぎても時間がもったいないです からね。どのくらい軽くなりましたか?心静かに、この本の続 きを読めますか?

 まだでしたら、もう一つだけ試してみましょう。次も簡単で すよ。

 残っている悪い感情に注意を向けましょう。その重さ、感覚 を感じます。

 自分に質問します。最初の質問と似ていますよ。「持ち続け てずっと苦しむ?それとも放り出して楽になる?」

 少しだけ時間を取り、真剣に検討してください。解放する ことを選んだのであれば、悪い感覚が離れていく感じ、軽く なった部分に注意を払います。自分の中にある、落ち着いて 平和な部分を認めてください。

 再度自分に質問します。「持ち続け、重い気分のままでい る?それともリリースして軽くなる?」持ち続けるか考えると きには、これから先もずっと持ち続け、ずっと長い間、不快な まま過ごすことを想像してみましょう。いやですよね。手放す ことを考えるときは、嫌な気分から開放された状態をリアルに 感じてみましょう。頬は緩み、体が自然とリラックスし、心は 軽くなります。感じてみましょう。そして、どちらが良いのか 決めてください。

 質問のバリエーションをいくつか試し、決断を繰り返してみ てください。

  • 「こだわり続ける?それとも、こだわりを捨てる?」
  • 「不幸でい続ける?それとも、幸福になる?」
  • 「感情にコントロールされ続ける?それとも、感情の主 人になる?」
  • 「固執し続ける?それとも、自由になる?」

 ハッピーに感じるため、リリースすることを選んだのでした ら、自分の中の軽い部分、自由で幸せな部分に注意を向けま しょう。それが本来の自分です。悪い感情や重さに覆い隠され て、感じづらくなっていただけです。その本来のハッピーな部 分に気づけば気づくほど、重い気持ちを持ち続けるのはばから しくなりますよね。だったら、手放しましょう。

 意図的に手放そうと努力する必要はありません。その感情 が流れていくまま、通り過ぎるままにしておきましょう。あな たが留めなければ、自然と流れ去っていきます。段々と弱ま り、やがて消え去ってしまいます。

 何度か繰り返してください。重い部分に集中し、感情の苦 しさを感じたら、次は心の軽さ、楽さ、幸福感を感じてくださ い。自分の中の幸福感、自由さを感じることは、感情から目を そらすことではありません。元々自分が持っている楽な感じ と、感情の重たい感覚を比較し、苦しいものを持ち続けるのは 馬鹿らしいこと、そしてリリースが自分に有益であることを確 認しているのです。それにより、解放するぞ、捨て去ってしま おうと、決意をだんだん強くしていっているのです。意識的で あろうと、無意識であろうとです。

 さて、この本を読み始めた頃の感覚と、正直に比較すれば、 少しでも気分が軽くなっていることに気づくことでしょう。私 が行ったのではありません。軽くなっている分、あなたが自分 で解放したのです。あなたが、リリースしたのです。

 では、あなたが今行った、リリースとは何でしょうか?

リリースとは

リリースの定義

 リリースという言葉は、「解放」を意味する英語です。この 場合、心のネガティブを解き放つことを意味します。漢字4文 字で表現するなら「消極消去」になるでしょう。

 この本の中では、思考、感情、感覚などを「もう、握りし めない」、「放っておこう」、「自由にしてやろう」、「解き放と う」、「どうでもいいや、もうかまわない」、「関わるのは止めよ う」と決意することで、解き放つことを意味します。あなたが 好ましくない感情を持ち続けているのであれば、それは自分で 握りしめていることを意味しているのです。

 もし、一番的確な表現を一つ選べと言われたら、私は「こだ わらない」を選択します。

「いいや、やれることは全部やった。この本の内容も、他の解 放方法も全部試した。いくらやっても、この感情だけは離れて いかない…」いくらそう主張しても、もし残っているならば、 あなたはその感情の端っこを、指先でつまんだままなのです。 そうして、離したと言っているだけです。

 別の表現をするならば、「コントロールしない」、「持ち続け ない」とも言えます。その感情をどうこうしようとしない、影 響を受けず、影響も与えないとも言えます。そこにあるのかも しれませんが、あなたは気にしません。ありのまま、そのまま にしておくとも表現できます。

 こう考えてください。野生の動物のように、感情や感覚は 自分から消えたがっています。あなたから離れて行きたがって います。でもそこに留まっているのであれば、あなたが柵で囲 み、首ひもを付け、そしてその端を握っているのです。

 私たちの感情や感覚は、自分で保持しなければ、それが起き ても、すぐに消え去ってしまいます。逆に言えば、すぐに消え 去らないのであれば、それは私たちがそうしたいから、持った ままにしているのです。たとえ、持ち続けて苦しくともです。

 あなたの手の中にゴミがあるとしましょう。横にゴミ箱があ ります。あなたは手の中のゴミを、そのまま持ち続けることも 出来ますし、ゴミ箱に捨てることも出来ます。どちらも可能で す。どちらを選んでも、それはあなたの意志なのです。

 それと同様、今感じている感情を、そのまま引きずるのも、 すっぱりと切り捨てるのもあなたの決断により決まります。こ の本は、その決断を行い、どう捨て去るのかを、お手伝いして いきます。

リリースがもたらすもの

 あなたはリリースすることで、少し心が軽くなり、少し幸福 へ近づきます。これが、リリースが与えてくれる全てです。

 明らかに私達は「幸福」というものに対して、一種の拒絶反 応を持っています。そうでなければ、自ずから幸福でいること を選んでいることでしょう。

 幸せというものは、単に私達の状態を表したもので、それ以 上の意味も、それ以下の意味もありません。ですが、私達は余 計な概念を付けてしまい、それから遠ざかろうとします。

 例えば、宗教は幸福と結びついています。宗教の目的は、究 極的には幸福でしょう。人々は幸福になるため特定の宗教を信 じようとします。あるときはその宗教がただの詐欺であり、な んやかんやと理由を付けられ、お金をむしり取られます。ま た、ある時は宗教を独自に解釈する人の説得により、テロリス トにされ、無差別殺人に走ることもあります。そうした宗教で は、指導者の立場の人間は憎しみを煽りはするにせよ、直接手 を下すことはありません。なぜなら、そうした人達は本当のと ころ、恐怖心を抱え、死を恐れているからです。

 それでも、信者たちはこうした行為が神の道で、幸せに通じ ていると信じているのです。

 冷静に考えるのであれば、そうした宗教とお金、暴力、憎し みは、自分が信じているものとはかけ離れていることに気づく でしょう。宗教を自分の感情や行動の言い訳に使っているにす ぎません。自分の信じる宗教の名前を、自分で汚し、傷つけて いることに気づいていません。

 そして、この様子を外側から冷静に見ている私達は、信者を 危険なものとみなす、もしくはバカにしており、そうした宗教 を嫌い、幸福を求めることを、間違ったことのように判断しが ちになるのです。

 他の例を挙げましょう。私達は財政的に恵まれている人を 見かけると、「きっと、あの人は幸福なのだろう」と思います。 もしくは、有名人を見かけても、同様に感じるでしょう。

 高級車に乗り、高級ブランドを身につけ、一流店へ入る様子 を見れば、「私もあのような立場なら、幸せだろうな」と想像 します。本当のところ、その人は自分の会社や家庭に問題を抱 え込んで少しも幸福でなく、そのため顔はこわばり、笑顔も見 せていなくてもです。

 そして、私達の嫉妬心は、かれらが少しでも問題を抱えて、 不幸になることを望みます。ですから、テレビのニュースやワ イドショーのネタで、有名人が不幸になる情報を耳にすると、 嬉しくなるのです。「ああ、私達と一緒だ。」

 さて、こうした宗教やお金、財政、名誉は幸せとは別です。 私達はそれを頭では良く理解しています。ですが、実際には混 同しており、複雑なものにしてしまいます。

 そして、自分たち自身については、いつも問題を抱えてお り、不幸せであると思っています。

 日本でも流行したフォトリーディング開発者のポール・シー リィ氏は、高速学習の権威でもあります。彼は心理療法におい て、治療を受ける人々に対し「あなたが欲しいのは何か?」と 尋ねられることが少ないことを指摘しています。そして治療を 受ける人々は、質問されても、たいてい答えることができない とも言っています。私達の心は問題と呼ばれる「したくないこ と」や「避けたいこと」に固執しており、達成したい状態へは 向いていないのです。

 では、私達が本当に欲しいものとは何でしょうか?

 それが、「幸福」です。

 少しの時間が取れるのでしたら、この文章から目を離し、考 えてください。「本当に、自分の欲しいものはなんだろうか?」

 根本的な答えを見つけ出す一つの方法は、質問に答え、その 答えについて、「では、なんのために?」と再度質問する方法 です。

 「車が欲しい」、「なんのため?」、「運転が楽しい」、「なんの ため?」、「自分の能力が上がったように感じるから」、「なんの ため、能力を上げるの?」、「より良い生活ができるから」、「な んのため?」、「そのほうが幸せになれる」

 他の方法もあります。全部でなくて構いませんから、さしあ たり欲しいものをリストしてください。次に、それを全部実現 した時のことを考えてください。さて、そのリスト全部を一言 で言い表すとしたら、なんでしょう?あなたの希望を包括的に 表現するとしたら、どの言葉が適切でしょうか?

 「幸福」、「幸せ」がぴったりきませんか?

 自分に正直に探求すれば、自分は幸福を願っていると理解で きるでしょう。ですがそれを何か複雑な物事に絡めたり、自分 の外側の物理的な要素や経済的な成功に求めたりし、自分でも 何を本当に求めているのか、わからなくしているのです。

 もしくは、幸福を求めることで逆に不幸になるとか、幸福に なろうとするのは弱い人間がやることであるという信念によ り、幸福から遠ざかるのです。

 私達の本質は「幸福」です。余計なものを抱えていなけれ ば、もともと幸せなのです。これは、リリースを行うことによ り、実感してください。抱え込んでいる物事を解放するにつ れ、気持ちが軽くなり、気分が上向くことを感じてください。 本当は、幸せなんて簡単に実現できる状態なのです。

 幸せをゴールにする必要はありません。苦難の道や競争、努 力は必要ありません。

 幸せをスタート地点にしましょう。まず、幸せになり、それ から物事にとりかかりましょう。そのほうが、なにかとスムー ズに進みますよ。試してください。

リリースと宗教

 リリースの概念は、昔から存在しています。幸福でないので あれば、何かがじゃまをしている、だからそれを取り除けば、 幸福になれるという考えです。宗教の中に、取り入れられてい ます。

 キリスト教では、犯した罪を告白すれば、許されるという考 えを持っています。宗派により、罪を認め、告白し、償うこと で許されるシステムもあります。償いは犯した罪よりも重い ものが必要であったようです。中世では免罪符を購入すること で、償いを軽減できました。「罪悪感」という悪いものを捨て 去り、幸せに近づこうというシステムです。

 神道では、お払いです。罪や穢れを払い清める行事です。神 社へ行き、申し込み、料金を払いますと、神主さんがやって きて、「はらいたまえー、きよめたまえー」とやってくれます。 これにより、何か得体の知らない悪いものが落ちて、幸せにな れるというシステムです。

 仏教では捨欲の考えがリリースと通じています。欲を持つこ とは苦しいですから、それを捨てると楽になるという教えで す。

 新興宗教では、様々なものが悪い部分を取り去るアイテムと して、利用されてきました。よく知られるのが、壺とか腕輪で すね。大金を払い、高価なアイテムを購入しますと、悪いもの が取れるという主張されてきました。高価なものほど、その効 果が高いとされ、そんな主張をするのは大抵詐欺なわけです。

 こうした、宗教的な流れを考えますと、私たちは古来より、 幸せでないときは、何かがじゃまをしていると、うすうす感づ いていたのでしょう。ですから、「悪い」とされているものを 取り除くシステムが、宗教には用意され、それは現在も使われ 続けているのです。

成功本

 近代では、人々は多くのものを書物から学んでいます。書物 は知識をもたらしてくれ、知識により人間も社会も成長してい きました。それらの書物の中には、どうやったら成功できるの かを教えてくれるものも含まれます。いわゆる成功本です。成 功本が売れるのは、私達は成功すれば、幸せになれると信じて いるからです。

 成功本は、おおむね2パターンに分けられます。成功した人 が、どうやって成功してきたのかを自慢げに書き示した、オレ 流成功方法本。もう一つは、考えたことが実現化するから、良 いことを考えた方が良いよという、ポジティブ・シンキング本 です。

 昔のオレ流成功法本は、正直ひどかったですよ。例えばある 本の中で、妾を持って、その子供まで幸せにし、自分が死んだ ときに、本妻と妾、それと子供全員が十分食っていけるだけの 金を残すつもりぐらい、度量が広くなくてはだめだと解説する 社長もいました。現代で同じことを言ったら、そりゃもう、大 ひんしゅくです。時代を経たら、通用しなくなる意見は、もち ろん真実ではありません。

 他にも、タイトルに成功の文字を入れたり、内容を成功にか らめたりして書かれていた本も多く売られていましたが、実は 能力開発や、行動規範の本が多かったです。さすがに、似たり 寄ったりで売れなくなってきたのか、内容はバリエーションに 富むようになりました。その状況は今も続いています。

 でも考えてみてください。「絶対的な真実の成功本」が存在 しているなら、その一冊だけ出版されていれば、世の中は成功 者にあふれるわけです。でも、成功者と呼ばれる人々は一部に すぎませんし、成功本も次から次へと出版され続けています。 つまり、絶対的な真実の成功本は今まで出版されたことが無い のです。

 その理由は、絶対的な成功が存在しないからでしょう。そも そも、成功とはどんなものであるかは、個人的な主観です。皆 が皆、異なったイメージを持っているのです。

 成功という言葉は魅力を持っており、私たちを魅了します が、あなたにとっての成功を実現する方法を教えてくれる本は 存在しません。それゆえ成功への道は、自力で見つける必要が あるのです。

 そして重要なのは、あなたが本当に求めているのは幸福であ り、実は成功ではないのです。

ポジティブ・シンキングとリリース

 ポジティブ・シンキング、積極的思考は手を変え品を変え、 周期的にブームになります。そのたびに、ブームに乗り、やっ てみる方もいらっしゃるでしょう。実は、私もそうです。しか し、気分は向上しますが、一時的なものであり、具体的な結果 が出ないため、長続きしません。

 うがった見方をすれば、「ポジティブ・シンキングで成功す る人は、もともとポジティブな人だけ」と言えます。ポジティ ブ・シンキングで成功する人は5%とか10%といわれていま す。この数字は統計的に出されたものではなく、そう主張し ている人の主観でしょう。しかし推測ですが、的を射た値では ないでしょうか。ポジティブな性格の人の割合はもっと多いで しょうが、ポジティブな考え方する人全員が成功するとは限り ません。

 大半の方がポジティブ・シンキングで成功できないのです。 すると「ネガティブな思いを抱えているから、ポジティブが実 現できないのだ」と主張がされ始めます。当然ながら、主義に より表現や手法は異なっています。スピリチュアルに表現され たものですと、「魂の解放」とか「浄化」、いわゆる「ヒーリン グ」とかありました。その方法は瞑想を主体としたものや肉体 的な行を課すものなど様々です。

 傾向としてポジティブ・シンキングが流行りますと、続いて ネガティブの解放が小さなブームになるようです。積極思考と 消極消去で共通する考えは、「思考は現実化する」です。その ため、ポジティブ・シンキングを実行した人が結果を出せない 場合、乗り換えやすいからでしょう。

引き寄せブーム

「ザ・シークレット」で広まった「引き寄せの法則」も、繰り 返すポジティブ・シンキングブームの一つでした。実のところ 内容には目新しいところが無く、ポジティブ・シンキングの知 識をお持ちの方は、タイトルに反して全く「秘密」でも何で も無いと、感想を抱いた方も多いでしょう。逆に初めて、ポジ ティブ・シンキングの考えに触れられた若い方々は、その未来 志向にわくわくしたことと思います。

 この本の翻訳本が出版されたとき、日本では、プレゼンテー ションの重要性が強調され初めていました。まさに、ザ・シー クレットは、古い情報でもプレゼンテーション方法により、価 値があり、素晴らしく、有用な考えであることを、多くの人に 提案することに成功できた良い一例です。ちょっと落ち込んだ とき、ザ・シークレットの動画を見てください。一発で気分が 良くなります。積極的に考えることのすばらしさを教えてくれ る、素晴らしい道具です。

 ザ・シークレットをご存じない方のために簡単に紹介しま しょう。

 後に「引き寄せ教師」として日本でも知られることになる、 アメリカのセミナー講師やスピリチュアル・成功達成分野の書 籍の著者達が集まり、人間を向上させるために協力しようとい う趣旨の集会を開きました。そこに、ロンダ・バーンと名乗る 女性がやってきて、面会を求めました。

 その集会を開いた一人、ベストセラー「心のチキンスープ」 シリーズの著者としても有名な、モチベーション向上講師であ るジャック・キャンフィールド氏を初め数人が、最初は軽くあ しらい、すぐに追い返すつもりで面会に応じたそうです。しか し、彼はロンダ氏に会い、ピンと来たそうで、彼女を他の講師 にも紹介し、企画に参加するように勧めました。そこで、ビデ オが撮影され、出演することに同意した講師達は、引き寄せの 法則というキーワードを使い、成功とその方法について、ポジ ティブ・シンキングの観点から、カメラに語りかけました。ほ ぼ、リンダ氏の台本通りの内容だったようです。リンダ氏は誰 が集会に参加するか、そしてそれぞれの講師が教えている内容 を良く理解していたのでしょう。

 その後、映像を編集し、演出のためのドラマ部分を付け加 え、動画共有サイトであるユーチューブに、初めの二十分だけ を公開するプロモーションが行われました。既に名の通った講 師や著者がたくさん出演していること、そして素晴らしくドラ マチックな演出と、ポイントを簡潔で具体的に説明していたこ とで、人気を博しました。

 全編の動画は有料ダウンロードやDVDとして発売され大 ヒットしました。後に書籍版も売り出され、ベストセラーにな りました。

 そのときに出演していた講師達も引き寄せの法則というキー ワードを利用し、本を出版したり、セミナーを開いたりしまし た。引き寄せの法則というキャッチーな言葉の話題性と、有名 講師陣の活動により、相乗効果で引き寄せブームがアメリカで 起きました。

 日本では、まず書籍版が大手出版社から発売され、引き寄せ の法則というキーワードと共にヒットしました。そして、講師 陣の書いた関連書籍も翻訳され、発売されました。書籍として のザ・シークレットは売れましたが、内容が詳しく書かれてい ないため、詳しく知りたい読者は、関連書籍も購入しました。 日本でも引き寄せの法則は、成功を求める人たちの間で、ブー ムになりました。

 しかし、今までのポジティブ・シンキングブームと同様、大 きな結果は残さなかったようです。大きな成功を多くの人にも たらしたのなら、ブームではなく、今も多くの人に支持されて いることでしょう。残念ながら、下火になってしまったところ を見ますと、今までの積極思考ブームと同じく、多くの成功者 を輩出できなかったようです。この状況は「金持ちになる方法 は、こうすれば金持ちになれますよという方法を売ることだ」 という皮肉が、当てはまります。

引き寄せから手放しへ

 今回のザ・シークレットでは、引き寄せ教師の中に、消極的 な思考を取り除く、リリースの考え方を教えている人たちも 入っていました。ですから、ポジティブ・シンキング一辺倒で はなく、消極解放、リリースの考えも、最初から含まれている ところが、今までのブームとは少し異なった部分です。

「ポジティブが上手くいかなきゃ、原因は心のネガティブ(消 極)だろう」と、消極思考を取り除く方法も求められ、引き寄 せ教師達の書いたネガティブ解放のための翻訳本も、日本で販 売されました。

 例えば、ハワイ伝承のホ・オポノポノというネガティブをク リーニングする方法が紹介され、日本でも書籍が何冊か売り出 されました。「愛しています」、「ごめんなさい」、「許してくだ さい」、「ありがとう」という4つの言葉を、好きな順番で、好 きなだけ繰り返す方法です。出版がザ・シークレットブームの 後という、タイミング的にはぴったりだったため、引き寄せに はまった読者で、スピリチュアルな手法を好む人は、ホ・オポ ノポノに流れたようです。

 引き寄せ教師の一人、ヘイル・ドォスキン氏は、リリース方 法の一つである、セドナメソッドの主催者です。彼の著作で、 セミナーで教えている内容をまとめた本も、日本語に翻訳され ました。セドナメソッドはとても簡単にリリースできる方法で す。ただ、日本語で読める情報が、この翻訳本だけであり、原 書の完訳ではなく、要約本であるため、いささか情報不足であ りました。(追記:現在は全訳された改訂版になっています)

 他にもネガティブを解放する手法はあります。様々な書籍も 発売されています。ネット上ではホ・オポノポノとセドナメ ソッドが、ブログ等で多く扱われたようです。この二つの方法 に共通しているのは、手順がとても簡単な点です。短い文章で 十分説明できるのです。紹介する側も、読む方も楽です。そし て、消極的な部分を手放すという点において、効果的でした。  引き寄せの法則というキーワードに引っかけ、「手放しの法 則」という表現が多く使われました。

 気をつけていただきたいのが、ネット上には方法を紹介、説 明する情報は多いのですが、個人的な解釈が入っていることを 明記していなかったり、手法の背景になる部分が説明されてい なかったりするため、かえって迷うこともあります。参考にな さる場合は、ご注意ください。もし興味があるならば、著者自 身の手で書かれた書籍を、まず読まれるのが良いでしょう。

この本の手法

 この本で紹介する方法は、私が普段行っている解放方法を元 にしています。自分で自分がどうリリースしているのかに注目 し、それを他の人に伝えるため、構築した方法です。

 既に存在する解放のテクニックには十分に効果的なものもあ ります。翻訳されていないものも多く、権利や言葉の問題もあ りますから、全てをそのままお伝えすることはできません。そ れが日本でリリースを広められない阻害となっています。です から、自分の経験を元にし、オリジナルな視点から組立て直す 必要がありました。

 自分が上手く開放している時の状況ややり方を観察し、その コツを他の人に伝えるために、まとめたものです。

 当然ながら、過去に学んだリリース手法の影響を受けていま す。そこで、簡単にどの手法から影響を受けているか、紹介し ておきましょう。

 私が最初に「自分自身で感情や思考の悪い部分を手放す」と いうリリース的な考えを受け入れたのは、中村天風師の書籍を 読んでからです。天風師の教えには、積極思考と消極消去、両 方の考え方が含まれています。何度も読み返し、チャレンジし ましたが、長続きしませんでした。原因は、消極的な部分を消 し去ることが、完全にはできなかったからです。心も体も、か なり強くなりましたが、数年で続かなくなり、いつの間にか消 極的な制限が、心の中にはびこってしまいました。

 しばらくして、ヘイル・ドウォスキン氏のセドナメソッドを 知り、実践しました。なかなか向上せず、原書やネット上の英 語情報を、辞書を片手に読みながら、段々と理解を深めまし た。自分でも、イメージ法を組み合わせるなど工夫しました。 しかし、解放できている実感がある時と、無い時がありまし た。そのため、何が間違っているのかを探しました。もしく は、何を理解していないのか、誤解しているのかを知りたかっ たのです。

 続いて、同じくリリース系のコースと書籍を販売する団体を 運営するラリー・クレーン氏が主催しているリリーステクニッ クを知り、これを学びました。これも、新しいアイデアやリ リースに対する視点をたくさんもたらしてくれましたが、確実 に手放せるポイントは、今ひとつ把握できませんでした。

 最後に、ヘイル氏とラリー氏の師匠に当たる、レスタ・レ ビンソンー博士のレクチャーを読み、やっとポイントをつかん で、納得がいくようにリリースできるようになりました。

 解放が簡単にできるようになったポイントとは、「リリース には幸せになる、自由になる決意が必要だ」という単純な気 づきでした。セドナメソッドでも、リリーステクニックでも、 そのヒントはちゃんと教えられていたのですが、レスター博士 のレクチャーを何度も読み返し、リリースの背景にある考え方 を学ぶまで、その重要性に気がつきませんでした。

 この決意の重要性に気づいてから、解放することが簡単にな りました。複雑な手順をとることなく、リリースできるように なったのです。小さな感情や感覚、制限する思考ならば、それ を見つけ、解放すると決意するだけで、手放すことができるよ うになりました。

 方法を模索し、多くの時間を費やしてしまいました。知るた めに時間をかけてしまいました。知るために時間をかけるの であれば、行うために時間を使った方が良いと、今は明言で きます。知識を増やしても、リリースは身に付きませんし、上 達もしません。実践すれば、身に付き、上達し、自分の経験 を通して、多くの疑問が解けます。実践した上で、さらに知 りたいのならば、その時こそ、新しい情報を求めるときでしょ う。

 今回時間をかけ学び、結果として遠回りをしたことの、利点 を挙げるとしたら、このおかげで、多少なりともリリースを説 明できるようになれたことです。

 この本でお伝えする、私の手法はLLリリースと言います。

名前は博士の頭文字からいただきました。リリースもLから始 まる単語のため、3つLが並ぶのも面白と思ったのもこの名前 を選択した理由です。ですが、レスター博士の手法そのままで はありません。

 レスター博士の手法を直接広めないのは、受け入れられない 方も多いからです。博士の考えにはスピリチュアルな部分も多 く含まれているのです。博士はもともと物理学者です。科学的 な考え方をする人でした。自分の心臓病で余命が少ししか残さ れていないことを知り、自らその原因を探ることを決意しまし た。自分の内部に原因があることを見つけ出し、それをやり通 していく仮定で、科学的な知識さえ超越する経験をし、スピリ チュアル的な考え方をするようになりました。

 スピリチュアルと言っても、中村天風氏の考え方を理解でき る人であれば、同じ程度であると考えてください。中村天風師 もまた現代の達人でした。力強い言葉にはスピリチュアルな部 分も多く含まれています。

 世の中が科学一辺倒になっていくにつれ、スピリチュアルな ものに反感を持つ人は増えていきます。ですから、博士の考え 方を受け入れられない人も多いのです。しかし、これはもった いないことです。なぜなら、感情のしこりを解消し、精神状態 を引き上げる道具として、リリースは手軽でとても優れている からです。

 そこで、感情を含めた心の中の制限を解消することに目的を 絞り、スピリチュアルな部分を外した手法としてLLリリース を構成しました。この本では更に簡単にするため対象を絞り、 怒り、悲しみ、恐れの感情を解消することを主な目的としてい ます。

感情への戦略

 私たちが感情を処理する戦略は4つあります。

 最初は、「抑制」です。抑え込むことです。

 乱暴者(感情の例えです)がやってきて街で暴れています。 それを相撲取り、プロレスラー、格闘家、もしくはアメリカの ドラマに出てくるような、筋肉むきむきの警察官であるあなた が、相手を力ずくで羽交い締めにし、覆い被さり、押さえ込む ような行為です。私たちが一般的にコントロールと表現してい るのは、この戦略です。でも、力ずくで押さえ込んでいるので すから、疲れてしまいますよね。力で押さえ込んでいるため、 あなたも動けず、ずっとその場所に留まることになります。

 二つめは、「表現」です。感情をそのまま表に表すことです。  暴れん坊はあなた自身です。怒りを感じたら、それをぶちま け、悲しみを感じたら泣き叫び、怖れを感じたら、縮こまり、 震えるのです。

 感情を表せば、解放されやすいのです。確かに心理療法に も、感情を感じ取り、そのまま表現する方法は、昔から存在し ているようです。ただ、これを一般の社会生活中で、のべつ幕 無しに行うのは問題です。なぜなら、あなたの感情は、他の人 にも影響を与えてしまうからです。

 前にも書きましたが、他の人がいる前で、悪感情を表に出す のは、テロリストと同じです。感情テロリストです。自分の気 分が悪いからといって、他の人を巻き込むのはよくありませ ん。

 それによって、あなたの気分は良くなるでしょうが、代わり に評価や地位、評判が傷つきます。そして周りの人々を、あな たの感情の渦に巻き込むのです。まさに、感情自爆テロです。

 感情を表現することで、他の人に影響を与えられるとわかる と、今度はその感情を意図的に長引かせるようになります。人 間とはずるい生物ですね。でもその結果、一番傷つくことにな るのは、たいてい自分自身なのです。

 三つ目は「逃避」です。ほら、あそこで誰かが暴れている。 危ないから逃げろという戦略です。

 目を背け、すたこらさっさと遠くの安全な場所へ逃げ去るこ とです。飲酒やギャンブルにのめり込む、映画やテレビなどエ ンターテイメントを楽しむ、クラブで踊りまくる、スポーツで 憂さ晴らし。場合によっては麻薬やドラッグを使用するように なるかもしれません。

 感情から逃げるために行うのであれば、何でも逃避になりま す。例えこの本を読むことであってもです。(あなたがリリー スを実際に行わず、ただ読むだけである場合の話ですよ。)

 いずれにせよ、暴れん坊はそこに残ったままです。あなたを 見かけたら、また暴れてやろうと、近づいてくるのを手ぐすね 引いて待っているのです。

 この逃避という戦略は、癖になりやすいのです。あなたは感 情から逃げられることを覚え、何かあると同じ逃避行動を行う ようになります。自分で自分に仕掛ける罠とも言えます。

 四つ目が「解放」、「リリース」です。

 誰かが暴れています。けれど、あなたはそれを観察するだけ で、何もしません。あなたは拳法や合気道など、武道の達人で す。あなたはどんな相手がやってこようと、自分は決して影響 を受けないことを知っています。もし、暴れている人が襲いか かってきても、それを受け流し、さっといなすだけです。そし て再度、暴れるままにしておきます。あなたは関わりません。 眺めているだけです。「暴れたいのなら、かまいません。どう ぞ、好き勝手に暴れてください。私は関わりませんよ。ただ、 見ているだけです。どうぞ、どうぞ。」こんな感じです。する と、暴れん坊はやがて疲れておとなしくなるか、どこかへ立ち 去ってしまうのです。

 通常は発生した感情に対し、いくつかの対処法を経験しま す。感情が湧き上がると、最初に「これをこの場で表現するの は適切ではない」と抑制します。抑制できない場合は、表に出 し表現してしまうでしょう。抑制に成功し、それが苦しい場 合、ストレス解消などの名目で、逃避します。逃避しない、で きない場合は、抑制したままにします。解放を知らない時は、 この状態のまま、感情が引いてくれることを願います。

 4つのうち、どれが一番あなたにとって有効でしょうか。深 く考えるまでもなく、感情を処理する一番安全で有益な方法 は、解放、つまりリリースすることだと、同意していただける ことでしょう。

 表現は時と場所を選びます。抑制と逃避でも少しずつ自然と リリースされるでしょうが、一つを手放し切る前に、日々の生 活でたくさんの新しい感情が積み重なってしまいます。

 解放は時と場所を選びません。しかも手短に実行できます。 何か嫌な感情が発生したのなら、手早く処理しできるのです。 感情が収まるまで待ち、長い間、不快なままでいる必要はない のです。

誰でも出来るリリース

生まれ持った能力

 私たち人間は、何もできない未完成の状態で生まれてきま す。おしめが濡れたり、お腹がすけば、大きな声で泣いて、お 母さんの助けを求めました。泣いていましたが、今成長してい る私たちが感じる「悲しい」感情とは、異なっていました。悲 しみは何かを失ってしまう、もしくは助けが得られないという 思いに関連がありますが、喪失も助けも、まだ理解していない 頃です。なぜかはわかりませんが、自動的に涙が出て、大きな 声で叫んだのです。この衝動は、人間の赤ちゃんに備わってい る、本能でしょう。

 おしめが交換され、ミルクを与えられれば満足し、自然と楽 しい状態へ戻りました。全てが新しい経験です。周りも、自分 の体だって、珍しく、おもしろかったのです。決して、直前の 不快な状況を抱え続け、引き延ばすことはありませんでした。 嫌なことがなければ、幸せでした。

 私達がこの状態のまま成長できれば、感情を握りしめ、必要 以上に長く苦しむことにはならなかったでしょう。しかし、こ の私たち本来の状態は、成長の過程で段々と、失われていきま す。

 自分がいて、他の人がいて、その人達は自分を助けてくれ る。そうした認識が始まり、嫌な状況を少しでも早く解決する ためには、できるだけ長い間、他の人の関心を引き寄せておく 必要を感じてきます。すると、自分が泣いている状態に集中 し、その気持ちをできるだけ長く続けるようになります。

 成長するにつれ、周りの人々を操るために、この戦略を多用 するようになります。不快さは生存に対する警告です。生きよ うとする本能が、少しでも保護者の関心を繋ぎ止めるため、感 情を長引かせようとするのです。しかし、ある時から、この戦 略はしつけの名の下に、間違いだとされようになります。「そ んなに泣くんじゃありません。」「わがままを言っていると怒り ますよ。」そして、次に感情を押さえつけることを覚え初めま す。

 さらに成長すると、今度はつらい感情と対峙しなくてもよい ように、別のことに没頭することで、忘れ去ろうとする努力を 初めます。たいていは自分の大好きなことに熱中するのです。 そうして、感情から逃避することを覚えるのです。

 どんな方法であろうと、自分が握りしめていなければ、通常 感情は自然と解放されるものです。なぜなら、生まれ持った能 力だからです。

 例えば嫌なことがあっても、一晩眠ったらそのことは覚えて いるが、気分はすっきりとしていた経験を皆さん持っているこ とでしょう。そのとき、あなたは無意識に手放していたので す。握りしめて、固着していませんでした。ですから生まれ 持った能力が自然と働き、消滅したのです。

 抑圧や逃避を選んでも、握りしめさえしなければ、やがて 消えていくでしょう。実際、過去にとても嫌な思いを経験して も、今ではなんとも思っていない出来事がほとんどです。しか し、自分で開放することを選び、リリースの手順で解き放つこ とに比べれば、はるかに時間がかかります。自分から開放しな ければ、一つが消え去る間に、日々の生活でたくさんの新しい 不快な思いが積み重なっていくのです。

 わざわざ長い間苦しむ道を選ぶ必要はありません。すぐに開 放しましょう。リリースは誰にでもできるのです。

 リリースはトイレで用をたすのと似ています。持ち続けるこ と、つまり我慢し続けるのは苦しいですよね。トイレに行き、 ちょいと準備をしたら、「さあ、出そう」と決意します。後は、 自然と出ていくにまかせるのです。

「ちくちょう。今朝食った昨日の残り物がいけなかった。かか あの野郎、あんなもの食わせやがって。今晩帰ってどんなに痛 いのか文句言ってやるまで、このまま出さないでやる。」

 こんな人はいませんよね。まるで落語のようです。普通はす ぐにトイレに駆け込みます。でも、感情に関しては、苦しくて も持ち続けるのが得だと判断しているがために、ずっと引き伸 ばすのです。

 出すものを出してしまえば、あなたはこう思います。「ああ、 すっきりした。」

 本来そのくらい自然で、簡単なことなのです。

あなたもできます

 私は決して立派な人間ではありません。お読みになっている あなたのほうが、たぶんずっと良い人生を歩んでいられると思 います。

 高校時代、早くソフトウェアの世界で働きたくて、東京の大 きな専門学校へ行きました。卒業後は担任推薦の会社に入りま した。担任の先生が接待を受けており、成績の良い生徒を送り 込んだという大人の事情でした。好きこそものの上手なれで、 成績は良かったのです。ところが希望した仕事とは異なってお り、入社前に社長に確認していた仕事もできる可能性も無いた め、三年で退社しました。

 自分で探した次の会社は小さな所で、エンジニアが入った り、出たりしていました。入社当時はとっくにバブルがはじけ ていたのに関わらず、社長を含め三名で三億円売り上げてい ました。社長は優秀なエンジニアで、彼の目線で全員に仕事の 量と質の期待を行うため、社員は辛いのです。それで社員はす ぐに辞めてしまいます。私も、一年と半年しか持ちませんでし た。(後ほど縁があり、再度入社し、再度約一年半で辞めるこ とになりました。)

 次に職種を変え、アメリカの能力開発の会社に入りました。 最初の話とは程遠い安い給料、英語が出来なくても良いという 話で合ったのに、資料は翻訳されず、されているものも誤訳だ らけ、おまけに報告も英語で書かなくてはなりませんでした。 辞書を引きながら毎日午前様です。

 しまいには、本部から宗教団体として認められたと華々しく 発表がありました。日本のスタッフは顔面蒼白です。昨日まで 顧客から「宗教ではないのか?」という質問に「いいえ」と答 えていたのに、明日から「はい」と答えなくてはなりません。 しかも、私自身この質問は、一人の客として、最初に一人のス タッフに尋ねていました。私は宗教的なものが嫌いだったから です。

 それから半年が立ち、体がボロボロの状態になり、逃げ出す ように辞めました。五年以上勤めましたが、生活できない給料 で、長時間、休日無し労働です。実際、お金のため、別のアル バイトを一つ、二つ掛け持ちしていました。それで、最後には ギブアップです。

 その後は企画会社と警備会社に努めました。結局最後の警備 会社が一番長く務めたことになります。

 警備会社は厳しいところでした。普通の警備会社より一割ほ ど給料は多いのですが、厳しさは2倍以上でした。私のように 十年以上務めた人は一割もいません。大きな会社で、企業の警 備、要人警護、現金輸送、建設、土木、イベントと警備業務な らなんでも行なっている会社でした。その中でも一番厳しい土 木工事での警備を一番長く担当しました。

 土木がなぜ厳しいかというと、お天気に仕事が左右され、収 入が安定しないからです。また、雨にふられればずぶ濡れで す。夏は高温、冬は寒さの直撃を受けます。夏場のアスファル ト舗装工事でキツイ状況では、一日あたり3リットルの水分を 取り、体重は2日で3キロ落ちました。また、私は花粉症持ち で、春は花粉で苦しめられます。会社の方針でマスクができま せん。緊急時に警笛がすぐに使用できないという理由からで す。

 また、バブルが弾けて以来、警備員を減らす傾向にあり、特 に道路工事では本来必要な交代要員を頼まない顧客がほとん どです。すると、昼休みも休憩もまともに取れないわけです。 私の場合、最長で14時間連続で働いたことがあります。その 間、食事一回を10分で済ました時以外は、ずっと立ちっぱな しでした。

 さらに、道路工事の現場は状況が素早く変わるため、対応力 も求められました。てきぱきと判断し、車両を誘導しなくては なりませんでした。

 主に東京の現場でしたので、ドライバーも不親切で非協力的 な人が多いのです。田舎の方は、道路や生活インフラも管理や 補修が必要であると理解しており、協力的な人が多いですが、 都会は逆です。ドライバーは道が通れるのが当たり前であり、 道路や生活のインフラ整備は「無駄なこと」と考えているた め、工事関係者に対する風当たりは相当強いのです。

 しかも、田舎よりも車通りは激しく、田舎ではお目にかかれ ない高級車も時には通ります。警察や暴力団関係者の車も多い ですし、緊急車両もバンバン通ります。とても気を使う仕事内 容なのです。

 それでいて、給料は皆一緒なのです。何十年務めた人であっ ても、昨日入ってきた新人と給料は一緒です。きつい現場を担 当しても、楽な現場を担当しても一緒です。

 また、仕事ができる人であればあるほど、難しい現場に配置 されます。同じ給料をもらいながらも、有能であれば仕事がき つくなり、責任が増えます。社会主義であれば建前は平等です が、それどころでない不公平な世界なのです。

 おかげで、体は強くなりました。様々なストレスにも対処で きるようになりました。また、私はほとんどの現場で職長を担 当しました。自慢にもなりませんが、経験・技術・対応力・現 場を仕切る能力がだいぶ上だったからです。

 ただ、十年を過ぎたある時から、漠然とした不安を抱くよう になり、それにしたがい段々と体調も落ちていき、しまいには 心臓を痛め、入院してしまう結果となりました。当初は、良く なることはなく、段々悪化していくと言われていました。数年 先に死んでしまうことも覚悟しました。現在は別の病院にお世 話になっていますが、この病気では珍しいくらいの回復具合で す。

 今なら分かります。私が警備会社で長年苦労しようとしてい た理由は、自分を罰していたからです。そのため、自分の体力 や性格とは本来そぐわない仕事を長く続け、自分をいじめ続け たのです。自ら苦労を重ね続けました。そして、限界を超えて しまったのです。

 当時は、自分がきつい状況でも強く生きているんだというこ だわり、どんな状況でも仕事がこなせるという自信を持ってい るから、続けていられると思い込んでいました。しかし、この 仕事を離れ、冷静に見つめてみれば、こだわりだけでなく、自 分にきついお仕置きを与えていたのです。

 宗教は嫌いだったのに、結果として団体の一員となってしま いました。しかも「宗教でない」と顧客や家族に説明してい たのは、全部嘘になってしまいました。不可抗力だったとはい え、その罪悪感と怒りが、自分を苦労する方向へ、罰する道へ 推し進めたのです。

 本当に馬鹿げた苦労をしました。しかし、こんな私でさえ、 リリースできるようになりました。ですから、あなたにも可能 です。

 もちろん、私以上に困難に満ちた人生を送っている人もい るでしょう。犯罪、大事故、大災害に巻き込まれた人もいるで しょう。しかし、そうだとしても意外なほど簡単に、人生は楽 しいものに変えられるのです。

 人生の問題は囚われているときはとてつもなく大きくて強固 なものとして感じられます。ですが、少しずつでも手放すこと ができ、離した分だけ、心は軽くなり、幸せに感じられるよう になります。

リリースを役立てる

 正直、私自身のためにも、この本を書こうと思いました。  もし、二〇年前にこの本を読んでいたら、もっと楽に人生を 過ごしていたでしょう。

 一〇年前に読むことができていたなら、わざわざ辛い仕事を 続けることはしなかったでしょう。自分をいじめ続けることは ありませんでした。

 そして一〇年後、何かの拍子に、再び消極的な罠に入り込 み、自分から人生を狂わそうとするときに、リリースすること を思い起こさせるためにも書き残しています。

 まだ若い方の中には、一〇年前の私、二〇年前の私と同じよ うな、煩悶を抱え、苦しんでいる方もいらっしゃることでしょ う。どうか、同じ轍は踏まないでください。人生は自分から楽 しいものにできるのです。必要なのはあなたの決断だけなの です。楽で、気分が軽く、自由な人生を歩んでください。それ は、周りの状況ではなく、自分の決意なのです。

 状況や環境を変えようとすれば、時間を食うばかりです。能 力を上げたり、技術を身につけたりしても、幸せにはなれませ ん。私達が生まれた時から持っている、幸せになれる能力を素 直に使用してください。本当は求めているのに、「幸せなんて 価値がない」と言う、あまのじゃくな性質を私たちは持ってい ます。特に若いうちはその傾向が強いのです。そして苦しいの にも関わらず、何かに固執し続けるのです。しかし、わざわざ 辛い道を行くことはありません。

 辛い人生を生き、茨の道を進むのは、ドラマや漫画、アニ メ、小説の主人公に任せましょう。あなたは実際に生きている 人として、楽で幸せに人生を送ることができ、それが本当に尊 いことなのです。

 考えても見てください。国民が幸せに過ごしているのであれ ば、その国はテロリストを生み出さないことでしょう。皆が本 当に幸せに生きられるのであれば、犯罪は起きないでしょう。 不安がない人は自殺をしません。本当に幸福を感じている人 は、特定の意見に固執することなく、いつも最善な選択肢を選 び、最高の結果を生み出すでしょう。あなた一人が幸せである ということは、その分だけ世の中を良くできるのです。

 テレビを見れば、論客や解説者、政治家に芸能人が政治、経 済、芸能に対して様々な発言をしています。テレビで発言して いる人達の話を聞いていると、筋が通っているように思えてき ます。その中には完全に同意できるものもあるでしょう。そん な時、ちょっと考えてください。「彼らの話している状態が実 現されている世界と、国民が皆幸せであると感じている世界。 どちらが良い世の中であろうか?」

 世の中の人の多くが幸せであると考えているのであれば、問 題は問題として存在しないことが分かっていただけるでしょ う。ゴシップには意味が無くなります。政治ではいつもその時 点でベストな方法が取られ、国民はそれに協力することでしょ う。

 そして今、あなたが疑いもなく本当に幸福であるのなら、ど うかそのままでいてください。人間はすばらしく優秀にでき ています。幸せでいれば、心のネガティブな部分を見つけたと き、自然と解放しているのです。「そんな不必要なものは持っ ていたくない」と判断し、しがみつくことはありません。です から、わざわざリリースの手法を行うこともありません。その まま、幸せなままでいてください。

リリースを効果的に

 リリースを効果的にするために、どうしても認めなくてはな らない二つの事実があります。それは、「物事をどう感じるか は、自分の責任である」ということ、さらに「感情が長引く としたら、それは自分が長引かせている」ということです。

 感情は自分で選んでいるのです。本当は身の回りに起きる出 来事に、決まった意味はありません。正しいも、間違っている もありません。物事自体には意味はありませんが、私たちはそ れを解釈しています。解釈した結果、自分に不利になると結論 づけると、悪い感情を発動して、対処しようとします。

 感情を抱くこと自体は間違いでありません。何に対してどん な感情を抱くかは、人生で学んだトレーニング結果です。危な いと思った時、急いで対処するため、怒りを使えば、瞬発的な 力が出せます。体に対しホルモンでドーピングし「さあ、攻撃 の時間だ」と教えるのです。動悸が早くなり、筋肉は緊張し、 相手を倒す準備を整えるのです。

 例えば車を運転していて、危ない場面で急ブレーキ、急ハン ドルを行う場合を思い出してください。子供が危険物やコンロ の火に手を伸しているところを想像してください。あなたは、 急いで対処するため、怒りに似た感覚、時には怒りそのものを 感じるのではないでしょうか。怒りとは本来、緊急時に対応す るために備わった、素晴らしい仕組みなのです。

 同じく危険を感じても対処が出来ないと感じるのなら、悲し みを感じます。泣き叫び、相手の同情を引こうとします。相手 に食べられるという事態では、同情を引くのが解決策だからで す。自分は子供の役目を演じ、相手が持っている子供を慈しむ 本能的な仕組みに、最後の望みを託すのです。もちろん、これ は子供であればあるほど、有効な手段です。ですから、子供は 泣きます。そして私達は本能的に泣く行為は「子供っぽい」と いう判断をしているのです。

 多少、危険を感じているが、対処可能であり、しかも緊急性 がない場合は、それを恐れるのです。怒りほどではありません が、事前準備のためです。

 この不安は、用心をさせてくれるのです。将来起きる可能性 のある危険を認識させ、注意深くしてくれます。必要な場合に 不安を感じれば、危険を回避できる可能性が上がります。

 危険がもはや手を付けられないと判断すれば、アパシー・無 気力になり、その状況から心を引き離します。動物であれば、 相手に食い殺されることが決定した場面です。何も感じなくて 良いように、自分から麻痺するのです。ですから、アパシーは 最低な心の状態なのです。

 実際の生活で大抵の場合、私達は状況を大げさに解釈し、抱 かなくても良いような悪い感情を発生させ、持続させ、苦しむ のです。状況を判断し、どの感情を引き起こすのかは自分の責 任です。自分で選んだのです。

 もし、これを他の原因、つまり自分の周りの環境だとか、国 や政治家、周りの人、上司、同僚、親、友達、先生、加害者、 自然環境、天災など、自分以外にあるのだと思っているなら ば、あなたは感情を開放し、楽になることはできないでしょ う。なぜなら、あなたは影響を受ける立場であり、自分では感 情に影響を与えられないと言っているのです。そして、いつも 周りの状況に必要以上に反応し、心は乱れ、不幸のままでいる のです。

 次に、結果としての感情を持続させることでしょう。他の人 が悪く、自分は単なる被害者であると主張するがために、もし くは同情をひきつけたり、有利な計らいを求めるため、その感 情に意識を合わせ続け、抱き続けるのです。

 何度も繰り返しますが、感情は放っておけば、後を引かず自 然と消え去ります。必要以上に持続するならば、誰がなんと言 おうと、自分で握りしめています。

 例え、あなたが大災害の被害者であろうともです。犯罪の被 害者であろうともです。事故の被害者であろうともです。あな たは、出来事の被害者であったとしても、感情の被害者では ありません。それをどう思うかという点では、あなたが加害 者なのです。

 大病にかかろうと、破産しようと、事故を起こそうと、自分 の感情の責任を実感し、必要以上に引っ張り続けない人は、幸 福な人です。強さを持っています。

 好ましくない感情を開放し、幸福で強い人生を送るために は、感情を発生させているのは自分に責任があり、それをどれ だけ持続するのか、自分で決めていることを認めてください。 正直に自分の人生を少し振り返るだけで、これが事実であるこ とは痛感できることでしょう。

本当の自分

 リリースが進むにつれ、だんだん本当の自分が出てきます。 今までネガティブな制限で隠されていた、本当のあなたです。  この本ではそれは何かを突き詰めません。あなたの理性、も しくは信仰や哲学的、心理学的、脳科学的な解釈でかまいませ ん。自分の信じているもので良いのです。

 この本で、自分が本当はどんな存在であるか示さない理由 は、明記してしまうと、それが期待され、リリースが働いてい るかという判断基準とされてしまうからです。

 リリースはあくまで、心に積み重なった制限を解き放つ方法 でしかありません。心の制限を解き放ち、幸せに近づく方法で す。

 様々なことが起きるでしょう。良いことが起きても、悪いこ とが起きても、あなた自身の本来の力なのです。リリースの力 ではありません。

 ただ、特定の力や能力を期待しないほうが良いでしょう。あ なたが自分の力がどのようなものか特定しなければ、素晴らし い能力が発揮できることでしょう。逆に、具体的に特別な能力 を期待し、それに固執すれば、幸福であることより、その欲求 に意識が向くようになり、リリースは進まなくなります。

 ですから、浮かび上がる悪い感情をリリースし、ただ漠然と 良いことが起きることを期待し、ハッピーでいてください。

(次章へ続く…)