ラリー・クレーンさんのリリース・テクニックの入門コース、アバンダンスコースに含まれる(実際には他の数多くのコースでも扱われています)、どうにかしようとすること(”Figure out")は人の一般的な傾向です。

リリース・テクニックを離れても、これは一般的ですから、学問で取り扱われたり、説明されています。それを紹介します。

1.「不確実性回避」

これは、人が不確実な状況や情報に直面したとき、無理に決断や行動を取ろうとする心理的な傾向を指します。(社会心理学・文化人類学) これが高い人は明確なルールや構造、予測可能性を好み、不確実な状況を避けようとする傾向があります。そのため、経験や知識が不足している状況でも、何らかの行動を起こすことで状況をコントロールしようとしたり、不安を解消しようとしたりします。

2.「行動バイアス」 何もしないことよりも何か行動を起こすことを好む傾向を指します。特に、結果が不確かな状況で、このバイアスが強く働きます。(心理学・行動経済学)

  1. 自己効力感 アルバート・バンデューラによって提唱された概念で、特定の状況において、自分が目標を達成するために必要な行動をうまく行うことができるという、自己に対する肯定的な感覚を表します。自己効力感が高すぎる場合、経験や知識が不足しているにもかかわらず、過剰な自信から無謀な行動に出てしまうことがあります。

4.問題解決におけるヒューリスティクス 人間が複雑な問題を効率的に解決するために用いる、経験則や直感に基づく思考法のことを指します。ヒューリスティクスは必ずしも正しい答えを導くとは限りませんが、迅速な意思決定を可能にします。経験や知識が不足している状況では、特に利用可能な情報に基づいた推測や、過去の類似経験からの類推などが用いられますが、これが不適切な行動につながることもあります。(認知心理学)

5.防衛機制 自我が不安や葛藤から自身を守るために無意識的に用いる心理的な戦略を指します。例えば、「反動形成」は、抑圧された感情と正反対の行動をとることで不安を解消しようとする機制です。経験や知識不足からくる不安に対し、実際には不適切な行動をとることで、その不安を打ち消そうとすることがあります。(精神分析学)

6.アクティビティ・トラップ 具体的な成果や効果が不明確であっても、ひたすら活動や行動を続けてしまう状況を指します。多くの場合、実質的な進捗や成果よりも、目に見える活動自体に価値を見出してしまうパターンを意味します。(経営学・組織行動論)

7.コミッション・バイアス 何もしないよりも、何かをした方が良いと人々が考える傾向を指します。特に、リスクや不確実性が高い状況下で、行動を起こすことが正しい選択だと錯覚しやすい心理メカニズムを説明しています。(心理学・行動経済学)

では、これを避ける手法としてどんなものが実証されているかといえば、自分の判断や思考を分析して認知する認知行動療法や日記等で自分のパターンを認識するジャーナル法があります。これに似ているものは、ラリーさんの誘導に含まれています。

それ以外の対処法としては、決断を意図的に遅らせる方法があります。組織的には、心理的な安全を確保できる組織づくりなどが行えます。

ということで、個人レベルではやはりリリースの手法が取りやすいようです。

また、自分自身を無条件に認める方法は、バンデューラの提唱する自己効力感を上げる可能性がありますが、リリース・テクニックの教えとしては、考えて思いつくものではなくて、より高い意識、人間の本然の部分から答え(解決策)を実行しなさいというもので、その時の実行力には必要なことです。

不安や衝動にかられて、答えを持っていないのに、あれこれと行ってしまう傾向を手放し、本然が気づいた解決策はサクッと実行する。そういう教えです。