レスター・レビンソン博士は教え子数名に、博士の教えを広めるように託しました。その中でラリー・クレーン氏とヘイル・ドゥスキン氏に、博士を加えた三人をエニアグラム的に分析してみます。

リリースするにつれ、段々と固定した自動的なパターンは少なくなります。その人本来の存在として、その時点の状況に応じた判断や行動を取るようになります。

これから分析する三人はもちろんリリースの達人であり、リリースを教えていた人たちです。習慣や欲求はもちろんなこと、性格も含めた自動反応パターンはほぼ捨て去っているでしょう。

しかしながら、その性格が生まれつきであれ、人生で形成されたものであれ、その人生で長時間付き合ってきたものです。最終的に性格の影響は少なくなったにせよ、彼らの教え方なり、考え方なりに現れています。

その違いを調べてみると3メンターに対して、自分と合う・合わない、理解しやすい・しにくい理由に気がつくかもしれません。

レスター・レビンソン博士

レスター博士はエニアグラムで分類するとタイプ5です。タイプ5のニックネームは調べる人、観察者です。洞察力があり、知的で、独創性を持っているタイプです。

ですから博士は、知識に溢れ、説明により理解を生徒にもたらそうとしたわけです。彼は長い間、そうしたスタイルでリリースを教えていました。

タイプ5が開放されると無執着になります。ですから、欲求を手放すことを教えました。幸福になるためには、愛着も憎悪もなくすように指導したのです。

博士がタイプ5だからといっても、開放された状態の良い資質は全タイプ共通の、「人間」としての美徳でもあります。ですからタイプ5だけでなく、全タイプに共通して彼の教えは有効なのです。他のタイプの人でも開放していけば、段々と特定の考えや物事に執着しなくなっていきます。

博士は人間の本然の状態は、動きのない静かな状態と表現しています。それはタイプ5の本然が表出した状態で、仏教用語の「空」と呼ばれる静かで広大な状態と記述が似ています。

ラリー・クレーン氏

リリース・テクニックで開放の手法を教えているラリー・クレーン氏はタイプ8です。ニックネームは挑戦する人、ボスです。パワフルで寛大なリーダータイプです。

今回紹介する3人の中では一番、「こうしなさい」とパワフルに指導するタイプです。実際には押し付けてはいないのですが、世の中の「ボス」タイプの人に嫌な思い出がある人は、押し付けがましいと感じることもあるでしょう。

開放を教えることでは、強い人格はマイナス要素ではありません。無意識の中の制限は、なんだかんだと理由をつけてリリースを妨害してきます。「ほらやれ」と尻を叩いてもらわないと続けるのが難しいのです。そのため、開放系のリーダーやモチベーター系の論者にはタイプ8の人が結構存在しています。

タイプ8は本能で動機づけられるタイプです。体感覚に優れています。リリース・テクニックには、体感覚によるリリース方法があります。それは、ラリー氏がタイプ8であり、体感覚に優れていたからでしょう。

タイプ8は人生の中でのテーマは力を持つことです。本来あまり、リリースなどの精神的なテクニックを自ら求めるタイプではありません。しかし、心の領域での力といえば精神力ということになります。そこでリリース・テクニックでは、博士の教えの中から「意思決定」の重要性が強調されます。

ヘイル・ドゥスキン氏

セドナ・メソッドのヘイル・ドゥスキン氏は3人の中で唯一存命の人物です。タイプ2であります。タイプ2のニックネームは助ける人、愛する人であり、寛容で癒やしの人です。

クレーン氏と比べ物腰が柔らかいため、クレーン氏の静かなパワフルさが強すぎると思う方でも、受け入れやすいでしょう。世の中は、バランスが取れているものです。

タイプ2自身が人間関係を重視するため、セドナ・メソッドはどちらかといえば人間関係重視です。タイプ2らしく、「愛」や「受容」よりの内容になります。

ドゥスキン氏は、テーマに関してイメージやストーリーなどを全て「受け入れる」トリプル・ウェルカムという技法を教えています。それは、タイプ2がフィーリング(感情・感覚)に動機づけられるタイプだからでしょう。イメージとストーリーもフィーリングの一形態です。

タイプ5・8・2

エニアグラムをご存知でない方は検索してみてください。円上に1から9までの数字が順番に時計回りで配置された図形が見つかるはずです。それが本来のエニアグラムです。エニアグラムはもともと性格分析法ではなく、その図形を指します。

その図形上で3人のタイプ5,8,2を確認してください。等間隔に2つ開けて配置されています。

エニアグラムには共通の特徴を3つずつ「3つ組」に分けて性格を考えます。その中でも心理的な基本要素として3つの「センター」を基本としています。8・9・1が本能・体感覚のセンター、2・3・4がフィーリング・心(heart)のセンター、5・6・7が思考・頭のセンターとして分類されています。

今回紹介した3人はそれぞれ別々に3つのセンターへ所属しています。そのため、誰かが新しくリリース系の技術を学びたいとき、この3人のどれかと合いやすいのです。同じ内容なのですが、それぞれの教え方の違いで、合う合わないが出ると思います。

エニアグラムの図形に戻り、注目してもらいたいのが、3・6・9はそれ以外の6つとはつながっていません。3・6・9はそれぞれのセンターの基本タイプです。それ以外の6つはサブタイプです。基本タイプはサブタイプと比べると、統合・開放に手間取り、難しい、時間がかかるのですが、一度統合・開放すると進歩が大きいとされています。サブタイプは統合・開放が基本タイプと比較すると簡単ですが、進歩が小さい・ゆっくり向上します。

そこで思い出してほしいのが、リリースとは軽いメンタル開放テクニックということです。リリースのメンター3人共にサブタイプであり、歩みが遅いが簡単に進歩するエニアグラム上で分類されています。

3人が手放し・リリースという軽いネガティブ開放技術で結果を実感し、成長していったというのは、偶然ではないでしょう。結果が比較的簡単に実感できたため、持続できたのではないかと思います。

私は基本タイプの3・6・9の人にリリースが向いていないとは思いません。すべての人が活用できるテクニックだと思いますが、基本タイプの性格の方は、進歩の無さや進みの遅さに諦めないことが重要だと考えています。リリースに限らず、一度にどんと大きな進歩があるタイプであると自覚していればリリースでも、他の精神的向上技術でも、持続できるのではないでしょうか。

基本タイプの方へは、「諦めないのが肝心」という、ありふれたアドバイスを贈りたいと思います。