好き/嫌い、有利/不利のように、複数の質問を交互に繰り返すプロセス(ワーク)があります。質問により現れる感情や感覚を毎回完全に開放しようとすると、えらく時間がかかります。

「できる?したい?いつ?」の3つの質問を使うテクニックは、基本的に「今現在」感じている感情や感覚などの不快感を手放す目的です。私達は意識が「現在」にある時が、一番有能なのです。しかし、「今現在」その意識や興味を奪ってしまう厄介者が現れている状態では、現時点に集中できません。そこで、「準備」を整えるために、基本的な簡単な技術を使います。

リリース・テクニックには体感覚を使用したテクニックもあります。これも、今現在感じているものを開放することに使用できます。

「今現在」表に出てきたものを処理し、現時点に意識を集めるために行う場合は、もちろんそうした感情や感覚が消えるまで行います。

一方、特定の主題について深く開放することを目的とするプロセス(ワーク)があります。特定の主題について「好き/嫌い」なところを順番に見つけたり、「有利/不利」について解放したりします。

出てきたものを毎回完全になくなるまで実行するのが本来良いのですが、そうするととても時間がかかります。さらに、私の経験ですが、現時点での「理性的」な判断で答えを選択しがちになり、深い解放が起きづらいようです。

質問は無意識や潜在意識と呼ばれる、私達が意識を向けたくない、もしくは向けることをさぼっている箇所に向けて行います。質問に刺激されると、普段見えないその一部が刺激され、感情や感覚を呼び覚まします。私達はそれをとらえて、明確に認識することで、無意識から引っ張り出し、開放できるのです。

質問により無意識から引き出される答えは、理性的なものばかりではありません。逆に、深い部分から引き出せば、理性では正しい答えと思えないでしょう。しかし、特定の部分にターゲットを絞り、出てきたものは、「質問に対する答え」です。それを解放します。

連続した質問を繰り返すプロセスでは、プロセスを繰り返すことで最終的に「深く手放す」ことを目的としていると考えたほうが良いかと思います。途中の質問一つ一つで、完全に出てきたものを解放しきろうとしない方法を私はおすすめします。

深く手放すには、深くまで刺激する必要があります。その過程でとても重い体感覚や疲れ、感情を感じることもあるでしょう。しかし、そうした刺激が「ここに解放すべきものがある」というサインです。重いものを取れば取るほど、結果は軽くなります。つまり、深い解放が起きます。

とはいえ、こうしたプロセスの途中ではプロセスのステップから外れないように気をつけます。たとえば、途中で嫌いな人が現れるたびに、嫌いな人に対処するプロシジャーを始めたり、嫌いな感覚を愛に変える手法に切り替えたりしないことです。たとえば好き/嫌いのプロセスを行うのであれば、「好き/嫌いのプロセスで、この主題は深く開放する」と言う意志を持ち、実行します。現れたものに柔軟に対応しようとすると、無意識の中の「解放したくない」抵抗により、様々なことが刺激され、主題に対しての解放が難しくなります。シンプルに、取り掛かる手法により「効果を最大に得よう」という意図を持ってください。

一人で行う場合、深く掘り下げれば下げるほど、隠れている抵抗で妨害されがちです。何をすべきが明確に認識できるように、「何を行っているのか」を書きながら実行しましょう。そこに書いた内容を確認しながら、「これに集中する」と解放すべき主題から外れないようにします。

これにより、複数の質問を利用するプロセスで、一人でもかなり深い解放が得られます。

実践例

私が複数の質問のプロセスを実行する場合、コピー用紙に書きとめ、終わったら通常そのまま丸めて、ゴミにします。

今回、この記事を書こうと思い、サンプルとして残しておいた実行例を紹介します。

ラリー氏のリリーステクニック、その基本コースであるアバンダンスコースに含まれている、「どうにかしようとすることへの憎悪(Aversion to figure things out)」の一部分、好き/嫌いのステップです。

  • 「どうにかしようとすることのどこが好き?」
  • 「どうにかしようとすることのどこが嫌い?」

何度か行ったことがあるのですが、今回はより深いリリースを起こすため、かなり自分の深い場所を探ることに集中しました。実行途中に書き出した内容は次の通りです。

No. 好き 嫌い
1 有能だとわかり、気分が良い(A) いらいらする (c)
2 Sexできる(A) 誰かが傷つく(A)
3 力をみせつける(S) けがや死人が出る(C)
4 自分が支配者だ(C) 他の人に迷惑がかかるのを防がなくては(A)(C)
5 時間的に早い(C) わなにかかる(A)
6 無限のコントロール(C) 他人のぎせい(C)
7 悪人をバッタバッタときり殺せる(C) よけいなことをして、めんどうをかぶる(S)
8 ヒーローになる(C) 手助けが受けられなくなる(A)

Aは承認欲求、Cはコントロール欲求、Sは安全/安心/生存欲求です。

あえて書いた通りです。つまり、漢字が思い出せない場合は、とにかくひらがなでも書いておいています。字が正しいとか間違っているとかを気にするのでなく、とにかくでてきたものを表すぴったりな表現をつけ、それを逃さないように書き残しました。

8ペアの答えがでましたが、大体40分程度かかりました。最初のペアの欲求を解消した時点から、段々と重い感じが強くなっていきました。何かがつかえている、固いものがある、膨らもうとしているエネルギーがある感じです。そうした感じは4つ目のペアまで段々と強くなり、「時間的に早い」の答えを出してから段々と小さくなり、「悪人をバッタバッタときり殺せる」の答えが出た時点で、あと少しでした。8つ目のペアを処理した時点で、心が空っぽ、とても静かになりました。それで実行を終了しました。

リリーステクニックの方法を使いました。答えを出し、それを3つの欲求のどれかとみなし、欲求を開放する方法です。

過程を少し思い出してみます。

1ペアを処理した後、少々残っている感じがしました。2ペア目の「どこが好き」を探っている時、左胸の当りに特に硬い、間隔がありましたので、それに集中します。瞬間的に薄っすらと「Sex…」という感覚がありました。

Sexは社会的に抑制された主題です。そうした習慣の中で私は生きてきましたので、この答えがあっという間にぼやけてしまうのを感じました。つまり、心のどこかに「抵抗」があり、それが答えを隠そうとしたのです。しかし、リリースするには、出てきたものを捕まえなくてはなりません。「そのまま受け入れる」こととし、たとえSexに関するものであっても引き出そうという意図を入れ直しました。

すると、曖昧だった固さが一瞬で大きく強くなり、「Sexできる」という答えが浮かびました。その答えを認識し、受け入れた時点で元の強さまで残りました。これがどの欲求かを調べると、理性的にはコントロールと思いましたが、承認という感覚が浮かんだので、承認欲求として欠乏感を解放しました。

3ペア目の「嫌い」の答えとして、「けがや死人が出る」というのは、どうにかしようとしてこじれた最終形態、戦争のイメージが出たため浮かんだ答えです。

5ペア目の「好き」の答え、「時間的に早い」の答えが浮かんだ時点で、「どうにかしようとする」私の習慣は、時間がもったいないという考えに結びついているという自己認識がおきました。そのため、何かを解決しようとするときは、「早く解決したい」といういらいらの感覚がつきまとっていたのです。この自己認識が起きたことで、何かが大きく開放され、それまでの質問/回答により溜まっていた感覚が8割方吹き飛びました。

6ペア目で再度こうした溜まってきたすっきりしない、つかえたような、固い感覚が再度強くなり始めましたが、7ペア目の「悪人をバッタバッタときり殺せる」という答えが出た時点で、僅かを残して吹き飛びました。

「悪人をバッタバッタときり殺せる」と言う答えは一度に出たものでありません。最初は他の人を斬りつけるイメージでした。「他の人を殺したい」という答えを思いついたのですが、ピッタリと言い表していない感じがありました。そこでもう少し探ってみて、「誰を殺したいのか?」と考えた時点でこの答えに到達しました。

この答えは、子供の頃の漫画やテレビ番組の主題である、「勧善懲悪」に影響を受けています。心の奥に染み付いていたようです。それは、次の8ペア目の好きの質問に「ヒーローになる」と答えたことでも、認識しました。

8ペア目の「嫌い」で、「手助けが受けられなくなる」は幼児時代の経験です。何かができるようになると、助けてもらえなくなり、その分受ける愛情が少なくなるという思いです。愛情を求めるのも承認欲求です。これを処理したら、すっきりし、それ以上答えが浮かばず…というよりも、質問を続ける必要がないことが自覚され、心がとても静かになりました。